日常に潜むダークパターン「希少性(スケアシティ)」とは?

folderスケアシティ(希少性)
local_offer, ,

ネットショッピング中に気になった商品を見つけた時、「残り1個です」の文字を見て焦って購入したことはありませんか?
これはまんまと売り手の悪意のある誘導に、引っかかったといえるでしょう。
ユーザーが無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザイン「ダークパターン」
その手法の一つである「希少性(スケアシティ)」は日常生活に潜んでいます。

希少性(スケアシティ)とは

ダークパターンについて解説した「ザ・ダーのクパターン ユーザーの心や行動をあざむくデザイン」の著書の中でも紹介されている具体例の一つです。

ダークパターンの具体例
1. スニーキング(こっそり)
2. アージェンシー(緊急性)
3. ミスディレクション(誘導)
4. ソーシャルプルーフ(社会的証明)
5. スケアシティ(希少性)
6. オブストラクション(妨害)
7. フォースドアクション(強制)

その中で「スケアシティ(希少性)」は、残りわずか本日限定などとあおり、ユーザーに購入を急がせる手法です。
中には在庫が充足しているにも関わらず、虚偽の情報でユーザーが不利な選択をするように誘導させる悪質なものもあり、注意が促されています。

「希少性の原理(法則)」どんな心理的現象か

社会心理学者のステファン・ウォーチェルのクッキーの実験

希少性の原理に関する実験を紹介します。実験の参加者の半数のグループには、クッキーが10個入った瓶を渡し、もう半数のグループにはクッキーが2個入った瓶を渡し、それぞれクッキーの味の評価をしてもらうというものでした。

画像引用元:少ないほど欲しくなる「希少性の原理」って?

瓶の中身はどちらも全く同じものでしたが、瓶の中に10個のクッキーが入っていたグループよりも、瓶の中には2個しか入っていないクッキーを食べたグループの方が高評価をつけました。さらに、2個入りのクッキーを何も言わずに渡したグループと、「他の人が食べてしまった」と告げて渡されたグループとでは、後者のほうがクッキーの味を高く評価しました。

なぜ作用したのか

この実験の結果から、人は数が多くあるものよりも、少ないものほどに価値を高く感じることが分かります。
希少性の原理は、使い方によっては人の心理(味覚や五感など)をコントロールできてしまう可能性があるといえます。

▼過去の記事も参考にしてください。

【まとめ】ダークパターンと心理的行動の関係について

メンタルモデルの心理学を逆手に取った信頼を失うデザイン

「希少性が高い」とは?

需要に対して供給が少ないとき、簡単には手に入らないからこそ、そのものに価値が生まれ価格が高騰します。

それは、「入手困難なものほど手に入れたい」といった心理が働くからです。 またそれがブームになっているものだと、さらに人は価値があるものだと思い込む傾向があります。

身近な希少性

動物園でゾウの赤ちゃんが生まれ、一般公開が始まったと聞くと「小さくてかわいいうちに一目見てみたい」と思うでしょう。
これも動物の赤ちゃんの期間はあっという間で、限られた期間しかお目にかかれないことに価値が生まれているのです。

恋愛においても、意中の相手が人気者であればあるほど、「他の人に取られるかもしれない」といった焦りが生まれ、恋人が忙しくてなかなか会えなければ、会える時間がより一層特別なものになるでしょう。これも希少な存在という希少性が生まれています。

画像引用元:彼女欲しいなら希少性を意識!モテる人・モテない人の自分の見せ方例

マーケティングにおける希少性(スケアシティ)の例

希少性には数量時間の2種類があります。ここで、それらの例を見ていきましょう。

数量の希少性

残り1部屋です、今○人がこのサイトを見ています

予約サイトで使用される手法で、他の施設やサイトで比較検討する機会を阻止し「今予約しないと予約が埋まってしまう」と、素早い決断を促しています。

ただいまお電話が込み合っています

これはテレビショッピングでよく耳にするうたい文句ですが、早い者勝ちの競争をあおり「売り切れて購入できないかもしれない」と価値を上げています。

時間の希少性

年に一度のブラックフライデー

セールの期間を限定することで「買っておかないと損をするかもしれない」と購買意欲を搔き立てています。

期間限定のフレーバー

コーヒーチェーン店などで季節ごとに販売される期間限定販売のドリンクは、「この時期しか飲めない」と購買行動につながります。

数量の希少性 × 時間の希少性 

お正月の初売りに数量限定で販売される福袋

初売りの時期にしか購入できず、さらに数も限られているといった制約があることで、数量と時間の希少性が掛け合わされると、より強力な効果が生みだされます。

上記で例に挙げたものは、いずれも希少性を高めたことで、ユーザーから冷静に考える機会を奪っているのではないでしょうか。

最後に

希少性の原理をマーケティングにおいてうまく活用することで、集客や売上アップにつながります。

しかし使用する際には、在庫が充足しているにも関わらず「在庫○個」と表記することや、長すぎる閉店セールを開催するなど、偽りの表現や不信感を抱かせてユーザーのから信頼を失わないようにしましょう。

またユーザー側も、希少性の原理を理解した上で、冷静に見極めることも必要ではないでしょうか。

 

参考希少性の原理とは?心理学的な意味や使い方を簡単にわかりやすく解説
希少性の原理とは
社会心理学者のステファン・ウォーチェルらのクッキーの実験(『影響力の武器―なぜ、人は動かされるのか』より)

Twitterでダークパターンリーク(#ダークパターンリーク)や企業のサイト改善PRも受け付けています。異論・反論もお待ちしています。

2つのメルマガ特典

特典表紙


※いつでも登録解除できます

関連記事

メニュー