「この人がおススメするなら、試してみようかな。」
広告を見ていて、広告内で商品を推薦している有名人に惹かれて商品を手に取ったことがある方は多いと思います。ただし、今Facebook(フェイスブック)上で有名人の名前や顔を無断使用したなりすまし広告が問題になっています。中には、有名人のインタビュー動画をAIで作成したものまで。この背景にはFacebook広告が誰でも簡単に、かつ低コストで出稿可能であるという点が影響しています。
アナウンサーの大江麻理子さんも被害に遭われています。
本当に本当に困っています。InstagramやFacebookで、私の名前を騙った詐欺広告が横行しています。何度削除依頼をしてもまた出てきます。なぜこんなことが許されているのか、メタ社に取材しようかと思っています。とにかく、テレ東以外が出している私の名前での広告は全て詐欺です。ご注意ください。 https://t.co/LhvtTiCWBQ
— 大江麻理子 Mariko Oe (@oe_mariko) November 20, 2023
このような中でユーザーは、詐欺広告か迷ったら会社概要やプライバシーポリシーを確認することが重要です。一方、広告を出す企業は顧客の信頼を得るためにどのような対策があるでしょうか。
目次
なりすまし偽広告がFacebookに急増している理由
著名人の顔画像や名前を無断で使用し、その有名人が広告塔やイメージキャラクターであるかのように見せかけて、SNS広告などで商品やサービスを宣伝する。こうした悪質な広告は、以前からFacebookを中心に頻繁に見られていました。特に昨年より急増し、実業家の前澤友作さんや堀江貴文さん、経済アナリストの森永卓郎さんなど、著名人の協力を装った偽広告が増加。前澤友作さんは、FacebookやInstagramの運営元であるMeta社に対して内容証明を送り、改善要請を行ったことを報告しています。
FacebookやInstagram上で、僕の写真や名前が広告として不正利用されている件ですが、何度要請しても改善されないため、弁護士を通して本日Meta社に内容証明を送りました。… pic.twitter.com/Wlat3tq9eI
— 前澤友作 (@yousuck2020) August 22, 2023
悪質な広告の内容は、投資セミナーやサプリメント、化粧品など多岐にわたります。消費者に「誰もが知っている有名人が勧めるなら安心」といったイメージや「好きなタレントが使っている商品なら買いたい」という思いを抱かせ、購買意欲を刺激する非常に悪質な手口です。
さらに、販売されている商品やサービスが実際には存在せず、購入したお金を騙し取られるといった詐欺広告のケースもあります。偽広告をきっかけに詐欺の被害にあった方が、FacebookやInstagramなどを運営するメタの日本法人を相手取り、「広告の内容が真実かどうかの調査を怠った」と主張して、損害賠償を求める訴えを起こしています。
参考:NHK NEWS WEB「なりすまし広告 SNS運営会社「メタ」の日本法人を被害者が提訴」
詐欺広告とダークパターンの関係
前述したように、そもそも詐欺広告は画像等の無断利用で法的にも問題となりますし、さらに人を騙して損失を与えていますので、当然推奨できません。ダークパターンも推奨できないWEBデザイン等の分類です。今回の詐欺広告との類似事例として、どのようなものがあるでしょうか。
ソーシャルプルーフ(社会的証明):出所不明のお客様の声
「捏造したお客様の声」が用いられている、そういったダークパターンも多く見られます。フリー素材の顔写真などを用いて、信憑性を高めるために一見それらしい肩書きで偽物のお客様の声を掲載していることも。
例えば「有名大学教授が推薦している」などと偽って表示すると、景品表示法の「優良誤認」などの不当表示にあたる為、注意が必要です。今回の詐欺広告はこのダークパターンに該当すると言えるでしょう。
■あわせて読みたい⇒ ソーシャルプルーフと不正広告の関係
スニーキング(こっそりかごに入れる)の一つ:おとり商法
「おとり商法」のダークパターンは、特定のアクションを起こそうとすると、期待した結果とは異なる結果が起こるもの、または集客のために「疑似の餌」を使う手法を指します。例えば、不動産仲介サイトに架空の物件を掲載するケースが想像しやすいでしょう。今回の詐欺広告も、実際には広告の有名人と広告商品に関連は無いことから、こちらのダークパターンにも近い内容と言えます。
画像参考元:ダークパターン事例 意図しない行為を実行させる「おとり商法」
■上記の画像もおとり商法の一例です。詳しくはこちらの記事を参照ください。
ダークパターン事例 意図しない行為を実行させる「おとり商法」
ミスディレクション(誘導)の一つ:クリックベイト
「釣りタイトル」とも呼ばれるクリックベイトは、ダークパターンの一つで、思わせぶりなタイトルでユーザーを誘い、クリックを促す手法です。この手法は、ブログ記事のタイトルやアフィリエイト広告、YouTubeのタイトルなどでよく見られます。
タイトルで約束している内容とコンテンツの実際の内容が大きく異なる場合や、期待していた内容が含まれていない場合が多く、ユーザーを扇情的なタイトルやサムネイル画像でリンクを踏ませる行為です。
■あわせて読みたい⇒ クリックベイトとは?その意味と危険性を解説。
クリックベイトの技術:クリックベイトの7つの良い使い方-必読!
今回の詐欺広告はいくつものダークパターンに該当・類似し、ユーザーに金銭的な被害まで出ている分、悪質と言わざるを得ません。
悪質な偽広告がFacebookで横行した3つの理由
なぜ、このような悪質な広告がFacebookで急増してしまったのでしょうか。大きな理由として、次の3つが考えられます。
誰でも手軽に、安い価格で広告が出せる
Facebookで広告を出すには審査を通過する必要がありますが、この審査は正直「緩い」と言わざるを得ません。例えば、不適切な言葉や卑猥な画像などには厳しい一方で、広告を出す側はFacebookのアカウントを持っていれば、どんな規模の会社でも、個人でも、あるいは会社を装った個人でも比較的簡単に広告を掲載できてしまいます。しかも、日額100円程度から広告を出稿できるなど、コストを抑えてPRできることも、悪質な業者にとって都合が良い要因となっています
広告としての機能が優秀
例えば、不動産広告を一度クリックしただけで、似たような広告が次々と表示される経験をお持ちの方も多いでしょう。これは、Facebook広告が「Cookie(クッキー)」と呼ばれる、ユーザーが閲覧したコンテンツ情報を一時的にデバイスに保存する仕組みを利用しているからです。
この仕組みを利用すると、売りたい商品やサービスに関連する広告やコンテンツを見た人に対して、続けざまに関連の広告を表示することができます。興味や関心のあるユーザーにだけ宣伝する方が効率的です。ただし、日本は欧米に比べて規制が緩いとはいえ、クッキーに対する規制が強化されつつあります。今後の動向に注目しておくことが重要です。
詳細なターゲティングを設定できる
広告を誰に表示するかの設定、すなわち「ターゲティング」を詳細に行えることもFacebookの特徴であり、広告機能として優れた点です。例えば、「健康食品の投稿に“いいね!”をした人」や「子どもがいる人」といった細かい設定が可能です。
また、自社が保有するメールアドレスとFacebookのユーザー情報を照合させて既存顧客にアプローチしたり、その顧客の「友達」や「友達の友達」、さらには興味関心が似ている人たちに広告を出したりすることもできます。「届けたいターゲットにピンポイントでPRできる」というのは、広告を出す側にとって非常に便利な機能です。しかし、その反面、この機能を悪用しようとする人も後を絶たないのが現状です。
ユーザーとして、Facebook広告を活用するために気を付けたいこと
詐欺広告の被害を避けるためには、何ができるでしょうか?
まずは、怪しい広告を経由して購入しないようにしましょう。怪しい広告内のURLリンクは、アカウントの乗っ取りや個人情報の流出といった「ワンクリック詐欺」のリスクもありますので注意しましょう。
ただし、もちろんFacebook上の広告が全て悪質な訳ではありません。中には、本当にユーザーにとって価値のある情報も含まれています。「この広告が気になるけど、本当に信頼して購入しても大丈夫なのだろうか?」と迷った場合、広告内の会社名などを手がかりに、企業サイトを訪れて電話番号や所在地、事業内容が掲載されている「会社概要」を確認してください。
一見、しっかりした会社に見えても、よく調べると実態がない会社だったり、怪しい住所や電話番号が記載されていたりするケースも多いです。個人情報の取り扱い方針を示す「プライバシーポリシー」が明文化されているかも、判断基準の一つです。また、購入後もクレジットカードの明細を確認し、請求額に間違いや不審な点がないか確かめることを心がけましょう。
Web広告担当者としての工夫すべき点と責任とは?
ここまでユーザー視点の情報を記載しましたが、Facebookは広告ツールとして非常に優れた機能を持っているので、企業としても活用しないのは非常にもったいないことです 。広告を出す際は、注意すべきポイントをしっかりと意識しながら進めましょう。
Facebookには悪質な広告が多いものの、そのような広告が増加しているのは、広告効果が高いためとも考えられます。Facebook広告はターゲットを絞ることや、狙ったターゲットに届けるといった点に長けており、機能的に非常に優れたツールです。
また、Facebookのユーザー層は他のSNSに比べて年齢層が高く、30代後半からのミドル世代が主なユーザーであり、多くの利用者が企業の管理職以上であるため、特にBtoB広告に適しているとされています。そのため、詐欺広告に紛れるリスクを恐れてFacebook広告を諦めるのは大きな機会損失と言えます。
Facebook広告を効果的に打つ際には、自社を信頼してもらうことが重要です。広告に興味を持った方に、自社が正当な企業であること、商品やサービスに実態があることをしっかりと示し、信頼を得ることが求められます。さらに、それらの対策をしっかりとった結果、怪しい業者との区別を明確にし、悪質な業者を締め出すことに貢献するという責任もあります。
WEB担当者としてFacebook広告を実施する上での4つの注意ポイント
企業のFacebookページをしっかり作る
1つ目のポイントは、企業のFacebookページをしっかり整えておくことです。「会社の写真だけは一応載せているけど、特に力を入れたコンテンツがない…」といったような、Facebookでの発信をおざなりにしている企業が意外と多いのではないでしょうか。広告内の企業名をクリックすると、企業のFacebookページに飛ぶため、ユーザーには意外とよく見られています。連絡先や基本データなどを正確で明確に記載しておくことで、信頼の第一歩になるでしょう。
プライバシーポリシーの明文化
2つ目のポイントは、プライバシーポリシーの明文化です。自社のプライバシーポリシーを掲載しておくと、ユーザーに「しっかりした会社だな」という良い印象を与えることができます。商品やサービスの詳細だけでなく、企業の公式ホームページや他のSNSアカウントの内容も、できるだけ充実させておくとよいでしょう。
企業サイトの会社概要の充実
3つ目のポイントは、企業サイトの会社概要の充実です。広告から企業サイトを見る方も少なくありません。会社の住所や代表者名、連絡先はもちろん、事業内容やポリシー、問い合わせ先などを明確に記載し、「信用できる」と感じられるサイトにすることがとても重要です。
販売サイトやホームページに「トラストフォーマット」を取り入れる
前述の注意しておきたいポイントはもちろんのこと、さらにサイトをより信頼してもらえるデザインにすることが重要です。それらを「トラストフォーマット」と呼んでいます。
例えば、
●サイト全体の色やフォントの統一感は保たれていますか?(基本的にサイト内は4色・4フォントが望ましいです。色がバラバラだったり、整理されていないとサイト全体が怪しく感じられます。)
●写真は適切なサイズになっていますか? 写真がぼやけたり、ぶれてしまってはいませんか?(そのような写真はサイト全体の品質を落としてしまいます。)
他にも、様々なWEBデザイン手法について、まだまだ知りたい方はE-learningを用意しています。
まとめ
インターネットショッピングが日常となる中で、私たちオンラインでの買い物に抵抗を感じなくなっているようです。Amazonや楽天などで買い物する際、販売元までしっかり見てから買うという人は少ないではないでしょうか。しかし、住宅購入のような大きな投資や、仕事での契約締結など重要な場面では、一瞬のクリックで決めるわけにはいかない、慎重に検討することでしょう。
Facebook広告も同じで、有名人の使用や驚くべき低価格に惑わされずに、クリック前には常に冷静に情報を確認することが重要です。また、広告を出す側としても、厳しいユーザーの視点を持ちながら広告を作成することが、信頼を獲得し効果的な広告活動を行うための鍵です。企業はダークパターンを回避し、顧客に正しい情報を適切に届ける責任をもって、販売活動に取り組んでいきましょう。
参考元:Web担当者Forum「なぜ? Facebookで詐欺広告が急増中! 理由や見分ける方法とは」
YAHOO!JAPANニュース「なぜ?#Facebook詐欺広告 は今もなお放置され続けているのか?消費者庁に聞く」
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