不動産業界に潜むダークパターン「おとり物件」

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賃貸などで物件を探していて、問い合わせをすると、既に契約済みだと告げられ、別の物件を紹介されることはありませんか?

そんな時、やはり良い物件は人気を集めるものだと素直に受け入れることが多いでしょう。

しかしそれは、実際には存在しない「おとり物件」かもしれないと、考えたことはありますか?

 

 

 

「おとり物件」とは?

「おとり物件」とは、不動産業界で使用される言葉で、物件検索サイトには掲載されているものの、実際には契約できない物件のことを指します。このような物件は「釣り物件」とも呼ばれます。

また、おとり物件を宣伝する広告は、不動産業界での「おとり広告」として知られています。これは、ユーザーを欺き、不利な行動に誘導するために意図的に設計されたダークパターンの一例と言えるでしょう。

 

おとり物件の種類

消し忘れられた成約物件

インターネットに掲載された当初は取引可能でしたが、後に既に成約済みとなった物件が削除されずに放置されている状況があります。不動産会社は顧客に正確な情報を提供するため、広告に掲載されている物件を定期的に更新する責任があります。しかしそれを怠っていたり、情報が反映されるまでにタイムログが生じることがあります。

実際の条件と異なる物件

実際には礼金が必要なのに「礼金不要」と表記したり、実際よりも駅までの距離が近いと偽るなど、虚偽の情報を含んでいる物件を指します。これは実際よりも良い物件であるかのように記載されています。

実際には取引ができない物件

既に他の人と契約済みであり、借りられない物件や、オーナーが貸す意思のない物件も存在します。これが最も一般的なおとり物件のタイプです。

これらの行為は違法であり、法律によって禁止されています。具体的には、誇大広告等の禁止(宅地建物取引業法第32 条)や、表示規約によるおとり広告の禁止(不動産の表示に関する公正競争規約第21条)(参照ページ11枚目に記載)において禁止されています。

参考;https://www.karugamo.co.jp/tips/1441/#index_id1

なぜ「おとり広告」をするのか?

そもそも、なぜおとり広告が行われているのでしょうか?

その目的は集客数を増やすことです。

不動産業界では、成約数を上げるために、集客数が非常に重要となります。そして、その集客数を増加させる狙いで、注目を集める物件を広告に掲載することが必要となってきます。

おとり広告では、契約するつもりのない条件の良い物件を、インターネットやチラシなどに掲載します。問い合わせをしてきた人に対して「たった今他の方の入居が決まってしまったようで。でもせっかくなので、他の物件もちょっとご覧になりませんか?」などと偽って別の物件を紹介します。

このような一連の流れは、経験したことがある人も少なくないでしょう。

実際に、2020年に公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会が実施したインターネット賃貸広告に関する調査によれば、大手賃貸情報サイトに掲載された物件の約12%、事業者の約36%でおとり広告が報告されています。

したがって、大手不動産会社や一般的によく利用されているサイトであっても、情報を盲目的に信じるのではなく、注意が必要ということが分かります。

参考:https://www.karugamo.co.jp/tips/1441/#index_id1

参考:https://www.sfkoutori.or.jp/webkanri/kanri/wp-content/uploads/2021/02/20210225_chintaichousa.pdf

おとり物件に対するTwitter上の声

「おとり物件」と「釣り物件」というキーワードで検索すると、多くのツイートが見つかり、被害に遭っている人がいかに多いかがわかります。以下に一部を紹介します。

典型的なパターンのおとり物件です。

 

直接店舗に出向くことが近道、という場合もあるかもしれません。

 

おとり物件の特徴と護身術

では、このようなおとり物件に騙されないためにはどうすればよいのでしょうか。おとり物件に共通する特徴と、それから身を守るために気を付けるポイントを解説します。

家賃や初期費用が安すぎる

周辺相場よりも安い物件は要注意です。家賃相場は各社サイトで簡単に調べられますので、事前にチェックすることをお勧めします

詳細な情報の掲載がない

場所を突き止められたら困るため住所が曖昧であったり、実際には入居できない物件のため入居可能時期が濁されていることがあります。少しでも気になったら早めに店舗に問い合わせてみると、時間の短縮にもつながります

内見のための現地集合を断られる

おとり物件であれば見学などできませんので、当然断られるでしょう。「一度来店していただかないと紹介できません」などと言われたら、警戒した方が良いかもしれません。

参考:https://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00200/

参考:https://sumaken.uniho.co.jp/column/p37169/

まとめ

今回は不動産業界におけるおとり物件について解説しました。

おとり物件のせいで失うものは、主に自分自身の時間です。

ただでさえ忙しい新生活や引っ越し準備の最中に、おとり物件が掲載されているサイトを閲覧する時間、おとり物件に釣られて望まない物件の紹介を受ける時間は、まさに無駄といえます。さらに、紹介された物件で妥協すれば新居での暮らしの質が低下し、納得のいかない結果にもなりかねません。

そんな中、大手不動産会社はおとり物件の広告撲滅に向けた取り組みを実施しています。

2017年には首都圏不動産公正取引協議会が、おとり広告等の違反事業者に対し、一定期間、不動産ポータルサイトへ広告を掲載することを停止させる施策を打ちました

また、株式会社LIFULLは、募集終了物件を自社が運営する不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S」から自動で非掲載にする取り組みを行っていて、2023年4月3日(月)より新たに不動産管理会社5社と連携を開始しました

このように各社が協力しおとり物件やおとり広告対策などの企業努力をしています。また、すべてのおとり広告に悪意があるわけではなく、不注意から生まれるものが多いことも事実です。今後は正確で信頼できる不動産情報が増えることを期待するとともに、ユーザー自身もサービスを注意深く利用する必要があるでしょう。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000323.000033058.html

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