全世界で3億5千万人以上のユーザーを持つ世界的人気オンラインゲーム「フォートナイト」に関するニュースが、大きな話題を呼んでいます。
FTC(米国連邦規制当局)は、フォートナイトを運営するEpic Gamesがプライバシーを侵害するデフォルト設定と、10代の若者や子供を含むユーザーを欺くようなインターフェース「ダークパターン」を使用していたとして、5 億 2000 万ドル(日本円にして710億円)もの巨額な制裁金を科したと発表しました。
これほどの巨額な制裁金は、FTCの規則に違反したとして課せられた制裁金の中では過去最大であり、各国で大きく取り上げられました。
目次
Epic Games(フォートナイト)が使用したダークパターン
ダークパターンとは、ユーザーに意図せず不利益な行動を取らせるように設計された悪意のあるデザインで日本でも問題視されています。
詳細は下記の記事をご参考ください。
Epic Gamesが使用したとされるダークパターンの一部を紹介します。
意図的にユーザーを課金に促すボタン構成
PlayStationでフォートナイトをプレイする場合、「アイテムをプレビューするための×ボタン」と「特定のアイテムを購入するための□ボタン」があります。
しかし、ある場面ではその機能が逆になっており、□ボタンを押すとプレビューが表示され、×ボタンを押すと課金されてしまう仕組みになっていました。
Epic Gamesは、このような分かりにくいボタン配置を導入することにより、ユーザーから数億円もの金額を不正に徴収していたのです。
確認がない購入プロセス
通常、アイテムショップで購入するアイテムをカートに入れると「このアイテムを購入しますか?」といった確認のための質問がありますが、フォートナイトではそのような購入ステップはありませんでした。ユーザーが“間違って”購入するように設計したと予測されます。
COPPA 規則(児童オンラインプライバシー保護法)に違反
子どもや十代の若者たちから、両親の通知や同意を得ずに個人情報を収集
Epic Gamesは、多くの子どもユーザーがいるにもかかわらず、ボタンひとつでゲーム内の仮想通貨であるV-Bucksを購入することが可能でした。
これは、アカウントと紐づいたクレジットカードを保存する支払いシステムが、デフォルトで設定されていたためです。
ボイスチャットやテキストチャットがデフォルトで設定
フォートナイトを一緒にプレイする仲間同士のコミュニケーション機能がデフォルトで設定されていることで、子どもたちは脅迫、いじめ、性的な嫌がらせを受けることとなり、心理的トラウマを抱える問題へと発展。
こうした問題を受け、Epic Gamesの社員から「ボイスチャットのデフォルト設定を見直したい」という声が上がっていたにもかかわらず、デフォルト設定がオフになるまでには長い期間を要しました。
その後、ユーザーがボイスチャットをオフにできるボタンが追加されましたが、ボタンはユーザーが見つけにくいように意図的にデザインされていました。
Epics Games(フォートナイト)に100万件を超える苦情が殺到
Epics Gamesは、一貫して「返金不可」という方針を貫きました。さらに、ユーザーがクレジットカード会社に不正請求の異議申し立てをした際には、ユーザーがそれまでに支払ったコンテンツへのアクセスをブロックするという対応を取ったのです。
ダークパターンやユーザーへの冷遇に対して100万件を超える苦情が寄せられ、結果的に制裁を受けることとなりました。
Epics Gamesは、その後ユーザーに対して2億4500万ドルを返金することで合意。そして今後、ダークパターンを使用して購入に促すことや、不正請求に異議を唱えたユーザーのアカウントをブロックすることも禁止されました。
ダークパターンへの改善措置
Epic Gamesは使用したダークパターンへの改善として、以下の取り組みを実施しました。
参考画像:https://gameisbest.jp/archives/29060
- 「購入しますか?」とユーザーの購入意思を再確認
- 支払い情報の保存を選択可能に
- 18歳以下のプレイヤーのデフォルト設定をオフにするなどの見直しを実施
- ゲームにログインする際、年齢に関する質問が表示されるように。定めれらた年齢に満たない場合、従来のアカウントは「機能限定アカウント」へ変更。保護者の同意手続き(メールアドレス入力)が必須に
機能限定アカウントでは、保護者が許可するまで、下記の機能が無効化されることになります。
・ボイスチャットまたは無料のテキストチャットを使用した他のプレイヤーとのコミュニケーション
・金銭を用いたアイテムの購入
・Epic以外が所有するゲームのダウンロード
・過去のアクティビティに基づいたおすすめの受信
・マーケティングメールやプッシュ通知の受信
・『ロケットリーグ』でのトレード
・特定の外部サービスやウェブサイト、アプリケーションにアカウントをリンクさせることを含む「Epicでサインインする」の使用
・カスタムディスプレイネームの選択
・SMSを用いた2段階認証の使用
引用元:EPICアカウントの保護者の同意
まとめ
世界中にプレイヤーが在籍するフォートナイトのニュースは、間違いなくダークパターンの認知を拡大するきっかけとなるでしょう。
この問題の背景には、利益を最優先するために、「やむを得ず」ダークパターンを取り入れる環境であったことが予想されます。
恐らく、それはどの企業でも抱えている問題ではないでしょうか。
Epic Gamesで働く社員は、さまざまな問題点を取り上げ、それらに対処するための対策を繰り返し提案しました。それが今回の訴訟に繋がり、最終的に多くの子どもやITリテラシーの低い人たちを救うことになりました。
今後Epic Gamesは、脱ダークパターンを推進する企業モデルとなり、更なるビジネス成長を遂げるに違いありません。
まずは「ダークパターンとは何か?」を知ることからはじめましょう。