予約サイトに潜むダークパターン

世界中のオプションが一目で比較できる予約サイト。とても便利ですよね。

でもこんな経験はありませんか?

<ケース1>

海外旅行に行くために飛行機のチケットを予約しようとした際、あるウェブサイトで安いオプションを見つけて手続きを進めました。

しかし、最終ステップで「手数料3000円」と表示され、そのサイトでの予約は諦めました。

<ケース2>

家族旅行を計画し、予約サイトを利用。

その後、毎週末におススメプランのメールが大量に受信されるようになりました。

後で振り返ると、予約サイトの個人情報を入力する画面では、最初からメールマガジンに登録するオプションがデフォルトで選択されていました。

メールアドレス入力欄の下、お知らせメールの配信☑が自動で選択されている

前述の事例は消費者を操ろうとするダークパターンにあたります。

本日はこれらの予約サイトに潜むダークパターンをご紹介します。

予約サイトに関連するダークパターン3つ

消費者庁ホームページよりダークパターンとは、

消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインなどを指すものです。

あなたが利用しようとしている予約サイトには、どのようなダークパターンが潜んでいる可能性があるでしょうか。

スニーキング(こっそり)

取り引きの最後に手数料を追加する、トライアル期間後に自動で定期購入に移行する、キャンセル料金の表示が非常に分かりにくい場所にあるなど、ユーザーへの事前の意思確認を積極的に行わず誘導する手法です。

⇒前述の<ケース1>最後に手数料3,000円の表示が出てきた例はこちらにあたります。

スニーキングについては、

ダークパターン事例 最後に予想外の料金が発生する「隠れたコスト」

ダークパターン事例 買い物客の同意なく「こっそりカゴに入れる」でもご紹介しています。

インターフェース干渉

事業者に都合のよい選択肢を事前に選択している、視覚的に目立たせているなど、ユーザーをサイトに有利な選択肢に誘導する手法です。

⇒前述の<ケース2>メールマガジンの例はこちらにあたります。

類似の視覚的干渉(ミスディレクション)については、

ダークパターン事例 誘導的なデザインで選択を操作する「視覚的干渉」でご紹介しています。

スケアシティ(希少性)

残りわずかや本日限定などとあおり、ユーザーに購入を急がせる手法です。

⇒予約サイトの宿泊施設の予約数を実際よりも少なく表示し、ユーザーに予約を急がせる例があります。

スケアシティについては、

日常に潜むダークパターン「希少性(スケアシティ)」とは?でもご紹介しています。

実は企業側も被害に

実は、ダークパターンは私たち消費者に見えている範囲にとどまらずビジネスの世界でも広がっています。

NHKの特集記事に下記のような事例が紹介されていました。

日本国内で人気の、海外の旅行予約サイトの関係者から、情報が寄せられたそうです。

「宿泊施設向けの管理画面で、ポップアップをワンクリックすると割引が自動的に適用される仕組みになっている。悪質な営業活動で日本のホテルを搾取していると思っている。」

声を寄せてきたのは、国内外を問わず、複数の予約サイトを活用しているホテルチェーン。

担当者が各サイトでの販売価格を確認していたところ、一部のホテルについて、該当の海外予約サイトでだけ、本来の価格より2割ほど安く販売されていることに気付きました。

急いで調べてみると、サイト側が設定したキャンペーンに、知らないうちに参加していました。

詳しく調査した結果、割引されているホテルでは、当該サイトでの販売を管理する画面に頻繁に表示される「ポップアップ画面」をクリックしてしまった可能性が高いことが分かったそうです。

ちなみに、このポップアップ画面では、画面を閉じるための右上の×印が、ベースの画面とほぼ同じ色で、非常に見づらくなっていました。

一方で、「あとで検討する」をクリックすると、管理画面を開くたびに、ポップアップが繰り返し表示され、煩わしい状態でした。

このホテルチェーンでは、少なくとも13のホテルで、2000室以上が、1割から2割引きで販売されてしまいました。

ホテルチェーンの担当者によると、収入が減少しただけでなく、公式サイトより安くなってしまったことで常連客から苦情が寄せられ、信頼低下にもつながったといいます。

しかし、この海外予約サイトは、世界的に展開する大手。

今後、増えると予想されるインバウンドの需要を取り込むためには、このサイトを利用しないわけにもいかないとのことでした。

予約サイトに関するダークパターン規制

これらのようなダークパターンを取り締まることはできないのでしょうか。

ダークパターンの中には、偽った情報などで消費者をだます意図でつくられたものもあります。

そういったものは景品表示法特定商取引法などに抵触すれば、もちろん、行政処分や罰則の対象になりえます。

他には、特定電子メール法で前述の迷惑メール対策についての規制も導入されています。

特定電子メール法は、迷惑メールを制限し、良好なインターネット環境を保つために制定された法律です。

正式名称は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」で、平成14年(2002年)7月に施行されました。施工後は、実効性を持たせるために度々改正されています。

特定電子メール法では、受信者から事前に同意を得た場合のみ広告・宣伝目的のメルマガを配信することが許されると規定されています。これをオプトイン方式と言います。

特定電子メール法に違反した場合、まず総務大臣および内閣総理大臣から改善措置命令が出されます。

もし、改善命令に従わず放置した場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を課されることになります。なお、法人が違反した場合の罰金は3,000万円以下です。

サイト運営者の特定電子メール法対策

特定電子メール法への対策として、オプトインを取得するためのチェックボックスはデフォルトオフに設定しておくことをおすすめします。

デフォルトオフとは、チェックボックスのチェックを外しておく設定のことです。

最初からチェックが入った状態(デフォルトオン)だと、受信者が意思を表明しなくてもメールの受信に同意してしまう可能性が高まります。

「同意した覚えがないのに、勝手にメルマガが送られてくる!」といった苦情が発生する可能性もあるため、メール配信の同意に関連するチェックボックスはデフォルトでオフにしておくほうが安心です。

最後に

ダークパターンの規制強化は進んでいますが、すべてを取り締まるのは難しいのが現状です。

しかしながら、個人でも企業間契約でも起きうるダークパターンの存在を認識し、あなたが何かの申し込みボタンをクリックする前に一呼吸おいて確認することで回避できる場合もあります。

また、サイトを運営する側としても、ダークパターンになってしまい、結果的に顧客の信頼を損ねることにならないよう、注意することが必要です。

一度失った信頼を回復するのは困難です。

ユーザーもサイト運営側もダークパターンを知り回避することで、サイトの利用環境を充実させましょう。

参考:NHK「あなたは大丈夫?ダークパターンに気付いていますか?」

   SUNLOFT「メルマガ配信に関わる法律「特定電子メール法」とは何?」

   迷惑メール相談センター「1-2 特定電子メール法」

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