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ダークパターン「おとり商法」とは?
ユーザーエクスペリエンスの専門家であるハリー・ブリヌルは、2010年に「ダークパターン」という言葉を作りました。
ダークパターンとは、ユーザーに意図しない、あるいは潜在的に有害な決定をさせることを強要したり、誘導したり、欺いたりすることで、オンラインサービスに利益をもたらすユーザーインターフェース(UI)やデザインのことです。
ハリー・ブリヌルは、ダークパターンの認知度を高めるために、ダークパターンを12種類に分類したサイト「darkpatterns.org」を運営しています。
この記事では、その中の1つであるおとり商法について説明します。
ブリヌル氏は、おとり商法を下記のように定義しております。
The user sets out to do one thing, but a different, undesirable thing happens instead.
ユーザーがあることをしようとすると、代わりに別の好ましくないことが起こる。
引用元:darkpattern.org
ユーザーに意図しない行為を実行させるインターフェース
おとり商法の最も有名な例は、Windows 10へのアップグレードを促すためのマイクロソフトの誤ったアプローチ方法です。
企業は、ユーザーに特定のアクション(広告をクリックする、商品をダウンロードするなど)を実行してもらいたいので、ユーザーの意図とは逆の動きをするインターフェース画面をデザインするのです。
Windows10のアップグレードの訴訟問題について事例をご紹介します。
The Seattle Timesによると、ユーザーは、仕事で使っているパソコンが勝手にWindows 10にアップグレードされ、正常に動作しなくなったとして訴えを起こしました。
事の発端は、アップグレードを避けたいユーザーが通知画面の右上にある「×」ボタンを何度もクリックしたことですが、マイクロソフト社はこのボタンの解釈を突如変更しました。
それは、ユーザーが「×」ボタンをクリックした時点で、アップグレードのスケジュールに同意したものと見なすようにしたのです。後でアップグレードを取り消すことは可能でも、それは簡単なことではありませんでした。
また、パソコンの電源を入れたままにしていて、ユーザーがアップグレードの通知を見なかったとしても、しばらくすると、ユーザー側の同意や操作なしに、自動的にWindows 10にアップグレードされるようになっていました。
結果、ユーザーの訴えが認められ、マイクロソフトは1万ドルの賠償金を支払いましたが、マイクロソフト社は同紙に対し、さらなる訴訟費用を避けるために控訴しないことにしたと説明しております。
■おとり商法の由来
そもそも「おとり商法」とは、もともとは対面販売での欺瞞的な販売手法が由来です。
これまで自動車販売店では、「おとり広告(おとり商法)」と呼ばれる手法がとられてきました。
極端な例ですが、「ベンツが100万円で買えます」という広告があったとします。その広告を見たユーザーは、安いと思い、販売店に問い合わせをして、来店されます。
ところが、販売店では「そのベンツは売れてしまいました。でも、もっと高くても性能の良い別のベンツがありますよ」と誘導する。中古車業界はこのような「おとり広告」を使って来店を誘う仕掛けが横行しておりました。
「実際にお店に行ったら、『そのクルマはない』とユーザーから苦情が多く寄せられました。それを受け自動車情報誌「カーセンサー」は、2004年に広告に車体番号が記載されていないと掲載しないことを決め、さらに売買契約成立後すぐに広告を非公開にする体制を整えました。その結果、おとり広告が大幅に減少しました。
おとり商法のポイント
・ユーザーは結果Aを期待して何かをするが、実際には結果Bが発生する
つまり
・企業は「メンタルモデル」を逆手にとったデザインを使用し、ユーザーは期待を裏切る動作をしてしまう。
広告のカーディーラーの「おとり商法」もMicrosoftWindows10とやってることは同様といえます。
引用元:・https://project.nikkeibp.co.jp/idg/atcl/idg/14/481709/062900232/
・https://biz-journal.jp/2018/01/post_21919.html
人の頭の中にある「メンタルモデル」を逆手に取ったデザイン
上記でも触れております「メンタルモデル」とはどういったことなのでしょうか?
「メンタルモデル」の定義は下記の通りです。
メンタルモデルとはヒトが「これはこういうものだろう」と頭でイメージすること
メンタルモデルとは、人の頭の中にある「ああなったらこうなる」といった過去に体験したことを基に予測して「行動のイメージ」をすることをいいます。
画像引用元:https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/mental-model/
WEBサイトの事例でいうと、下記のデザインもメンタルモデルです。
・「認識:×ボタン → 行動のイメージ:×ボタンを押したら閉じるよな」
・「認識:下線のある青色のテキスト →行動のイメージ:下線のある青色のテキストを踏めば、リンク先に移動できるはずだ」
・「認識:下線のある紫色のテキスト → 行動のイメージ:下線のある紫色のテキストはもう表示したことがあるな」
引用元:https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/mental-model
Eコマースにおけるおとり商法のダークパターン
おとり価格を使って見込み顧客を集めるチケット販売サイト
ここでは、見込み顧客を集めるために、おとり価格(おとり商法)を利用した2つの事例をご紹介します。
特徴的なのは、最初の検索結果ではリーズナブルな価格が表示されているのに、実際にチケットの詳細を見てみると、知らされた価格よりも高くなっていることです。
■航空チケットの一括検索サイトの事例
旅行の価格を検索し、最初の検索結果ではリーズナブルな価格が表示されますが、実際にチケットの詳細を見ると、知らされていた価格より高額になります。下の画像のとおり、キューバへのフライトは€299で提供されていますが、最終的には€792になります。
画像引用元:https://www.linkedin.com/pulse/dark-patterns-design-5-bait-switch-adrian-ng-gonzalez/
引用元:https://www.linkedin.com/pulse/dark-patterns-design-5-bait-switch-adrian-ng-gonzalez/
■コンサートチケット販売サイトの事例
とあるファンがローリング・ストーンズのカナダでの単独公演のファンクラブ会員向けチケット先行販売に参加しておりました。
ところが、4枚のチケットをオンラインカートに入れた後、そのファンはチケット1枚あたり119.50ドルから179.50ドルに警告なしに価格が跳ね上がったことに気づき、その後訴訟問題へと発展しました。
その様子をファンがビデオで撮影し、証拠として残しています。Facebookにアップロードしたその時の動画は以下の通りです。
消費者のメンタルモデルに合わせる
ユーザー(消費者)の期待通りに動作するサイトを設計する
ヤコブの法則とは、ユーザーは初めて触れるコンテンツに、既存のものと同じような動作体験を望むという法則です
例えば、InstagramやFacebookなど、写真の共有がメインとなるSNSはみな似たようなUIをしているということ。
ヤコブの法則を採用し、学習コストを意図的に高めるようなサイト設計は避けることが望ましでしょう。ユーザーが既に慣れ親しんでいるデザインや挙動(インタラクション)を採用することが、トラスト(信頼)されるサイトにつながり、ユーザーとのトラブルを回避することができるのです。
引用元:https://nocodejapan.org/media/17-essential-ui-tips/#6yakobuno_fa_ze
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