日本のダークパターン現状、意識調査から分かる企業に求められる対策

オンラインショッピングやアプリ利用の普及に伴い、ユーザーを騙す「ダークパターン」という問題が深刻化しています。

日本の消費者庁でも、ダークパターン対策や規制について検討が始まっていますが、欧米諸国に比べて遅れているのが現状です。

ダークパターンは一時的に利益を上げられるものの、長期的に見てユーザーの信頼を失い、利益にも悪影響を及ぼしてしまいます。

本記事では、日本のダークパターンの現状や規制について詳しく解説。さらに、ダークパターンを避けるための注意点も併せて解説します。

日本の消費者が、ダークパターンについてどのように感じているのかが分かり、なぜ問題とされているのかについて理解が深まるでしょう。最後まで、じっくりとお読みください。

そもそもダークパターンとは?

ダークパターンとは「消費者が無意識に不利な行動を取るように設計された、悪意のあるデザイン」のことです。

もっと詳しく説明すると、アプリやWebサービスなどにおいて、ユーザーを欺いたり誤解させたりして、多くの時間やお金を使わせ、さらに、ユーザーを特定の選択に誘導させる、悪意のあるデザインのことです。

では、具体的にどのようなデザインがダークパターンに当てはまるのか、ダークパターンの一例を確認してみましょう。

  • 送料や手数料など重要な情報を分かりにくい場所に記載し、消費者に「安い」と誤解させる
  • 簡単に登録できるが、キャンセルや退会方法を複雑で難しくする
  • 無料トライアルが終了すると同時に、何の告知もなく料金を請求する

上記のような例がダークパターンに該当します。ダークパターンの事例を詳しく知りたい方は、下記をお読みください。

ダークパターンの事例~人を惑わすマーケティングとデザインを見極めよう~

ダークパターンを使うと、サイトの登録数や購入数は増えます。一時的に、企業の利益は大きくなるように見えるでしょう。しかし、ユーザーを欺いて利益を得る行為は、消費者の信頼を失い、利益を得られなくなってしまいます。

長期的な利益のためには、ユーザーにとって分かりやすく、倫理的なデザインを心がけることが重要です。

日本の消費者のダークパターンへの意識調査とその結果

前章でも少し触れましたが、ダークパターンによって不利益を被った消費者は、企業への信頼を失い、サービスを利用しなくなる可能性が高いです。まずは、日本の消費者がダークパターンについて、どのようにとらえているのかデータから現状を把握していきましょう。

ここでは、2023年8月に株式会社コンセントがインターネットで、ECサイトやアプリなどを使ったサービスの利用や商品購入の経験がある、18歳から89歳までの日本国内在住の799人の消費者に調査した結果をご紹介します。

約7割の消費者がダークパターンを見たことがある

こちらの調査は「ダークパターンを見たことがあるか」というアンケートを取ったものです。

ECサイトやアプリを利用し、購入したことがある人の約7割が、下記のダークパターンのいずれかを1つでも見たことがあると回答しています。

【質問内容】

  • ある選択肢が他の選択肢と比べて目立っている
  • 割引価格が適用されるには定期購入が必要など重要なことが小さな文字で書かれている
  • 「はい」「あとで回答する」のように拒否する選択肢がないポップアップが何度も表示される
  • 定期購入なのに1回だけの購入であるかのように表示されている
  • 商品を閲覧したいだけなのに、会員登録を求められた
  • 解約方法が分かりにくい・解約に手間や時間がかかる

OECD(経済協力開発機構)による分類を元に、コンセントにて日本語で要約したもの

参考:CONCENT:「ダークパターンレポート2023」を公表。ECサイトやアプリでの購入経験者799人への意識調査

 

約4割はダークパターンにひっかかったことがある

先ほどの質問内容で挙げた「ダークパターンにひっかかったことがある」と答えた人は、46.1%と半数近くいることが明らかになっています。

「視覚や言語、感情などを使用し、購入者に対して意図していない商品を選択させる」また、「繰り返し表示されるポップアップに仕方なく「はい」の選択を行った経験がある」などと回答しています。

しかし、同調査で、ダークパターンに関する理解度を問う質問では、ダークパターンについて「まったく聞いたことがない」と回答している人が55.2%と半数以上いることが分かりました。「ひっかかったことはない」と答えた方の中には、ダークパターンであることを認識できていない人もいるかもしれません。

意識調査結果から明らかになった現状

意識調査結果を見ると、ダークパターンを見たことがある人が多く、実際にひっかかった経験がある人が半数近くいることが明らかになりました。これは、ダークパターンが決して珍しい手法ではなく、多くの人が被害を受けていることを示しています。

また、同調査の「ダークパターンにだまされないためには、どんなことが必要だと思いますか?(複数回答可)」の質問では、7割以上の方が「ダークパターンにだまされないように気をつける」必要があると考えています。

さらに、「企業側がダークパターンを使わないように取り組むこと」が重要だと回答している人も7割を超えています。

 繰り返しになりますが、ダークパターンは、消費行動を促しやすい一方、ユーザーに不快感やストレスを与え、企業への不信感を抱かせてしまいます。一時的に利益を得たとしても、ユーザーは離れていく可能性が高いです。

ダークパターンを避け、ユーザーにとって分かりやすく倫理的なデザインを使用することで、企業のイメージ向上し、信頼が得られ、最終的に顧客獲得・利益アップにつながります。

消費者庁は、ダークパターン対策に力を入れていることから、今後もニュースや報道が増え、日本国内でのダークパターンの認知も広がることが考えられるでしょう。

今こそ、企業はこの問題に真摯に取り組むことで、長期的な信頼を勝ち取るチャンスなのではないでしょうか?

日本におけるダークパターンの規制

日本では、ダークパターンの規制は欧米に比べて遅れているのが現状です。しかしながら、ダークパターンを直接に規制する法律はありません。ただし、特定の悪質なケースにおいて、法令違反となる可能性があります。ダークパターンは、企業にとって、法令違反になるリスクも含まれているのです。

ここでは、代表的な法令違反となる可能性があるものをいくつか解説していきます。

特定商取引法の改正

特定商取引法とは、簡単に説明すると、企業による悪質な勧誘行為を防止し、消費者の利益保護を目的とした法律です。2022年6月1日の改正法によって、インターネット通販の詐欺的な定期購入商法対策の規制が設けられました。

以下の項目は、詐欺的な定期購入商法に係る法改正の概要です。

  • 定期購入の条件を表示しない、定期購入でないと誤認させるような表示を禁止
  • 申込期間や解約に関する事項の表示の義務化
  • いつでも解約可能といっておきながら解約手続きを難しくする行為を禁止

これらの法令に違反するすると、最悪の場合行政処分のみならず直罰の対象になる可能性があります。

参考:消費者庁:特定商取引の改正について―通信販売規制を中心に―取引対策課

ステルスマーケティングの規制

ステルスマーケティング(ステマ)の規制が始まったことをご存じの方も多いではないでしょうか。景品表示法よって、2023年10月1日より不当表示に指定されました。

ステルスマーケティングは、広告であることを明記せずに商品やサービスを宣伝する行為であり、ユーザーを意図せず消費行動を誘導しています。

消費者を欺き、不当な利益を得ようとする行為なため、景品表示法の規律への違反となる可能性があります。

参考:消費者庁:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。

ステルスマーケティングの規制について詳しく知りたい方は、こちらをお読みください。

【10月開始ステマ規制】ダークパターンとの共通点を解説

優良誤認・有利誤認表示の禁止

ステルスマーケティングと同様に、景品表示法によって、優良誤認・有利誤認の表示も禁止されています。

分かりやすく説明すると、消費者に「ものすごくお得だ」と思わせておいて、実際はお得ではないということを指します。

  • 通常価格よりも50%OFFと表示されているが、実際は元の価格が高く設定されている
  • 本日限り1000円!と表示されているが、実際はいつも1000円で販売している
  • アフターサービス無料と謳っているが、実際は費用がかかるケースがある

例を挙げますと、以下が優良誤認・有利誤認の禁止にあたります。こちらは、みん評に掲載されている、ファッションレンタルの口コミ・評判です。

こちらの口コミによりますと、汚した覚えがなく写真では確認できないシミに対して、予期せぬ請求があったようです。こちらのサイトでは以下の画像で分かるように、シミ1ヶ所につき修繕費は600円と記載があります。しかし、ふたを開けてみると、税込6,380円と10倍以上の請求がありました。これは、ダークパターンの一種である隠されたコストにあたります。

※「隠されたコスト」とは、購入のプロセスの最後で予期しない料金が発生するダークパターンのことです。

このような表示は、消費者を欺く不当表示に該当し、景品表示法違反となる可能性があります。

参考:e-GOV 法令検索:不当景品類及び不当表示防止法

ダークパターンを使わないための3つの注意点

ここまでの説明で、ダークパターンは企業やユーザーの双方にとって良くないことだと分かったと思います。

しかし、Webデザイナーや企業が悪意を持ってダークパターンを使っているとは限りません。良かれと思い、意図せずにユーザーを欺くデザインを使ってしまうこともあるでしょう。

ここでは、ダークパターンを使わないための注意点を3つ解説します。ユーザーからの信頼を失わないためにも、確認しておきましょう。

ユーザーに強要したデザインではないか確認する

ダークパターン対策の本質は、ユーザーにとって分かりやすく、利用しやすいサイトデザインを構築することです。まずは、ユーザーに強要したデザインではないかどうか確認しましょう。

企業視点で見ると親切だと思ってやっていることが、実はユーザーにとって分かりにくく迷惑になっていることがあるのです。

例えば、とあるECサイトでは、商品購入ページにて、初めから関連商品にチェックが入った状態で「まとめて購入手続きへ」のボタンを大きく表示されています。

さらに、欲しい商品のみ購入できる「購入する」ボタンは上にスクロールしないと表示されないようになっています。

企業の観点から見れば、関連商品を一緒に購入している方は多く、初めから選択できるようにすることが心地よいと思われるかもしれません。しかしながら、ユーザーにとっては本当に必要でないこともあり、意図せず関連商品を購入してしまう恐れがあるでしょう。

関連商品を望まない場合、「購入する」ボタンを見つけるのに手間がかかる可能性があり、この商品のみを購入できないならば、別のサイトに移る選択をするユーザーもいるかもしれません。

常にユーザー視点に立ち、「この表現はユーザーにとってどう捉えられるか」「この操作はユーザーにとって負担にならないか」とユーザーファーストの考え方を徹底しましょう。

目的達成を意識しすぎない

企業は目標達成のために様々な施策を行います。しかし、その過程でユーザーを欺いたり、不利益を与えたりする懸念があるため、注意が必要です。

例えば、メールマガジンの登録件数を伸ばすことが今期の目標であると仮定しましょう。登録件数を伸ばすために最初から「メルマガを読む」にチェックを付けているデザインにしたとします。

このデザインだと、短期的には登録件数は上がるかもしれません。しかし、半強制的に購読させる仕組みになっているため、ユーザーからの信頼を損ねてしまいます。長期的な視点で見てみると、企業にとってマイナスとなる可能性が高いでしょう。

企業から課せられた目的達成だけに捕らわれてしまうことは、誰しもが起こりうることなので、注意が必要です。

他社サイトのデザインを鵜呑みにしない

成功している他社のデザインを参考にすることは、よくあることですが、そのまま真似してしまわないようにチェックすることも重要です。

なぜなら、そのデザインがダークパターンである可能性も潜んでいるからです。

例えば、送料や消費税などの情報を意図的に隠したり、定期購入ではないということをユーザーに誤解させたりするダークパターンが使われているかもしれません。

他社のデザインを参考にする際には、そのデザインがどのように機能しているかを慎重に分析し、それがユーザーにとって良い体験を提供しているか、ユーザーを欺いていないかどうかを見極める必要があります。

まとめ

現代社会において、オンラインショッピングやアプリの利用は不可欠な存在となりました。しかし、その利便性の陰で、消費者を欺き、不利益を与える「ダークパターン」と呼ばれる悪意のあるデザインが潜んでいます。

この記事で取り上げた意識調査によると、約7割の消費者がダークパターンを見たことがあり、約4割が被害を受けていることが明らかになりました。

また、日本におけるダークパターン規制は、欧米諸国に比べて遅れています。特定の悪質なケースは法令違反となる可能性もありますが、直接的な規制がないため、企業は判断に困り、意図せずダークパターンを使ってしまうリスクもあります。

真の繁栄を目指す企業にとって、今求められるのは、倫理的な姿勢に基づいたユーザー目線のデザインです。意図的な誘導や不利益を与えることなく、安全で快適なサービスを提供するよう心がけることが重要です。これにより、ユーザーの信頼を得て、長期的な利益を追求することが可能になるでしょう。

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