OUR VISION
「脱ダークパターンを加速させる」
日本で「ダークパターン」という言葉を耳にするようになったのは、ここ数年のことです。
欧米では10年ほど前からダークパターンを規制する動きが進んでいましたが、日本では規制が遅れ、2022年6月にようやく特定商取引法を改正する法律が成立、施行されました。
それまでは、国内でも利用者に不利益を及ぼすデザイン手法が特にネット通販などで蔓延していましたが、残念ながらその多くは合法とされ、消費者は泣き寝入りするしかありませんでした。
しかし、「ダークパターン」または「欺瞞的(ディセプティブ)デザイン」という言葉がUX/UIデザインのスペシャリストHarry Brignull氏によって定義され、多くの人々によって世界中に広まったことにより、国内でも法改正とともに一般的な認知度が徐々に広がりを見せてきました。
最近では、UI/UXデザイナーや有識者だけでなく、一般ユーザーによるダークパターン関連のSNSやブログの投稿も増えてきています。
そもそもなぜ私たち企業やデザイナーはダークパターンを使ってはいけないのでしょうか?
それは、一言でいうと「顧客の信頼を失い、ビジネスに必ずリスクが生じる」からです。
ダークパターンを使えば、一瞬で大きな利益を生み出せるかもしれません。しかし、クレームや返品対応、ブランディングの低下、顧客生涯価値(LTV)などを総合的に考えると、悪手であることには間違いありません。ほんの少しの短期的な目先の利益にとらわれ、長期的な合理性からかけ離れてしまうのです。
例えばアメリカ発のビジネスSNS「LinkedIn」は、ユーザーの意図に反して友人にスパムメールを送るデザインを取り入れ、集団訴訟を起こされた結果、1,300万ドル(当時のレートで約15億円)の支払いを命じられました。
反対に、動画配信サービス「Netflix」は、ダークパターンとは逆の「会員が解約しやすいデザイン」を取り入れたことで、驚異的なスピードで会員数を増やし、動画配信市場シェアでトップになりました。
つまりダークパターンの手法を学び回避することによって、あなたの消費行動だけでなく、ビジネスを守り成長させることにも繋げられるのです。
私たちが目指すもの
私たちdarkpatterns.jpが目指すものは、次の2つです。
1. darkpatterns.jpというメディアを通じ、ダークパターンについての事例紹介、リーク募集、議論、問題提起を行うことで、消費者のリテラシーや理解を深め、被害者の減少に繋げる。
2. ダークパターンを使う危険性について企業や経営者に警鐘を鳴らし、ダークパターンを使わずにビジネスを推進する手法やテクニックを共有することで、規制強化や抑止力強化につなげる。
このように、「企業」と「消費者」の両側面から脱ダークパターン加速へのアプローチを深めたいと思っています。
・子どもがゲームアプリを楽しんでいる際に、突如表示されたポップアップを押してしまい、訳も分からず課金させられていた。
・学生がメッセンジャーツールに広告掲載された高額(とは一見分からない)商品を購入してしまい、アルバイト代を全て注ぎ込むことになった。
・契約されていたご本人が亡くなった後も、口座から受信料が引き落とされ続けた。
これらはダークパターンによって苦しめられた方々の事例の、ほんの一部です。
どうすれば、初めてスマートフォンに触れる子どもや年配の方、ITリテラシーの低い人たちや一般消費者が、理由もわからず不利益を被る状況を減らすことができるか?
どうすれば、素晴らしい商品やサービスを作った人や企業が、ダークパターンを使わずに、合理的かつ長期的にビジネスを展開し、それを消費者に届けることができるのか?
その答えを導き出すために役立つメディアサイトにすることが、私たちの大きなビジョンです。
最後に、私たちの活動を応援してくださったHarry Brignull氏、並びにご協力いただいた多くの執筆者、関係者の方々に改めて御礼を申し上げたいと思います。
株式会社オレコン代表取締役
Darkpatterns.jp編集部代表
山本琢磨 (やまもと たくま)