【イギリス政府が新法施行】隠れ手数料と偽レビューが全面禁止に

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2025年4月6日、イギリスで大きな法改正が施行されました。オンライン取引において、ユーザーに気づかれにくく加算される「隠れ手数料」と、「偽レビュー」が全面的に禁止されました。

この新法は「デジタル市場・競争・消費者法(Digital Markets, Competition and Consumer Act 2024)」の一部で、イギリス政府が掲げる「変革のための計画(Plan for Change)」の一環として、消費者の保護と健全な市場形成を目的に導入されたものです。

新法で禁止されるダークパターン

今回の法改正では、特にオンラインで見られる2つの「ダークパターン」が明確に禁止されました。

1.隠れ手数料(ドリッププライシング Drip pricing)とは

隠れ手数料とは、購入手続きの途中で突然加算される費用のことで、ユーザーにとって非常にわかりづらく不意打ちとなる料金です。隠されたコストとも呼ばれています。

これまで、オンラインでチケットや商品を購入する際に、チェックアウトの最終段階で事務手数料や配達料などが加算される「後出し方式」が一般的でした。調査によれば、これらの費用は商品価格の最大25%にも及び、イギリスでは年間22億ポンド(約4,100億円)もの追加負担が発生していたとされています。

今回の法改正により、次のような**避けられない料金はすべて**価格表示の初期段階で明示**することが義務づけられました。

【対象となる具体例】

  • 電車やイベントのチケット予約時の手数料
  • フードデリバリーでの配達料や管理料
  • インターネット契約時の初期工事費

これらはすべて、「商品価格に含まれている」として、購入初期の段階で利用者にわかるように提示しなければなりません。

なお、ユーザーが任意で選べるオプション料金(航空機の座席指定、荷物の追加など)は、この規制の対象外です。

最終決済画面で追加料金が発生?ドリッププライシングとは?

2.偽レビュー(フェイクレビュー Fake review)とは?

偽レビューとは、事実に基づかない高評価の口コミを使って、実際よりも商品やサービスを良く見せる不正な情報操作のことです。あわせて、消費者に広告であることを隠して宣伝を行うステルスマーケティング(ステマ)も、近年問題視されています。ステマはレビューの体裁をとりながら、実際には事業者の依頼で書かれたものである場合が多く、利用者の信頼を著しく損なう行為です。

これまで製品やサービスを不正に高評価に見せかけるために、虚偽のレビューを作成・掲載・依頼する行為が後を絶たず、消費者の判断を大きく誤らせてきました。

政府の調査によると、2023年時点でオンラインレビューの約10%が偽物である可能性があるとされています。

【典型的な被害例】

  • 「星5つのレビューを信じて予約したレストランで、1つ星の料理を出された」
  • 「好評レビューの商品を買ったが、写真と全然違う粗悪品だった」
  • 「届くはずの商品が結局届かなかった」

今回の法改正により、企業やサイト運営者には次のような法的義務が課されます。

  • 偽レビューを作成・依頼しないこと
  • 不正なレビューを掲載しないこと
  • レビューの真偽を確認し、削除・防止体制を整備すること

たとえば、自社サイトやECモール内の商品ページで、明らかに不自然な高評価レビューが掲載されている場合、それを放置するだけでも違法とみなされる可能性があります

■あわせて読みたい⇒【10月開始ステマ規制】ダークパターンとの共通点を解説

規制が厳しくなった背景

イギリス政府は、この法改正を「消費者の勝利」と位置づけています。

  • オンライン消費者の90%がレビューを参考にしており
  • 2023年のオンライン消費総額は2,170億ポンド(約41兆円)にのぼる

こうした実態から、レビューと価格表示の正確性が市場全体の健全性に直結するという認識のもと、厳しい対策に踏み切りました。

さらに今回の法改正は、「誠実に営業している企業」が不正業者に価格面・評価面で不当に負けることを防ぐためのものでもあります。

日本企業にも迫る実務対応の必要性

今回の法改正はイギリス国内向けですが、次のような日本企業には直接的な影響が及ぶ可能性があります。

  • イギリス市場向けに商品を販売しているEC事業者
  • 多言語で海外対応している宿泊・飲食予約サイト
  • グローバルモール(Amazon, eBay など)への出店者

加えて、同様の法改正がEU、米国、日本国内でも進む可能性が高まっており、今のうちからの対応が差別化につながります。

■日本での実例を見る⇒大正製薬が景品表示法違反で措置命令!ステマ規制違反事例から学ぶ

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対応項目 実施ポイント
価格表示の見直し 商品ページですべての必須料金を明示しているか確認
チェックアウトフローの簡素化 ページ遷移を簡潔にし、料金が後出しになっていないかを点検
レビュー管理体制の整備 レビューの信ぴょう性を確認・監視する体制を設ける
外部業者の選定基準見直し 口コミ代行業者など、リスクのある委託先を利用していないか再確認


まとめ

今回のイギリス法施行は、「消費者をだまさない企業が評価される社会」への転換点です。

日本の中小企業にとっても、価格と情報の正確性・透明性を重視する経営は、信頼獲得と持続的な成長のカギとなります。

まだ法的義務ではない段階から先手を打つことが、長期的には有利な立場を築く近道です。

■関連ニュース⇒イタリア、レストランやホテルの偽レビュー規制強化へ

参考:

Support the Guardian:UK bans £2.2bn ‘sneaky’ fees and fake reviews for online products

GOV.CO:Fake reviews and sneaky hidden fees banned once and for all

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