2025年3月21日、消費者庁は通信販売会社「夢グループ」に対し、景品表示法第8条に基づき6,589万円の課徴金納付を命じました。対象となったのは、2020年に販売された「立体マスク30枚セット」の新聞広告での表示です。
実際の画像
広告には「本日の広告の有効期限5日間」などの文言が用いられており、あたかも“5日間限定の特別価格”であるかのように見せかけていました。しかし実際は、その価格で常時販売されていたため、「取引条件が実際よりも有利に見える表示」として、景品表示法第5条第2号に違反すると認定されました。
これは「有利誤認表示」と呼ばれるもので、消費者にとって合理的な判断を妨げる表示とされています。
ダークパターン「希少性(スケアシティ scarcity)」とは?
今回の表示に見られるのが、いわゆるダークパターンの一種である「希少性(スケアシティ)」の手法です。これは、「今だけ」「残りわずか」「本日限り」といった文言を用いて、商品やサービスの入手が難しくなると思わせ、消費者に購入を急がせるテクニックです。
本来、数量や期間が本当に限られている場合であれば問題ありません。しかし、実際には常に同じ価格や条件で販売しているにもかかわらず、あたかも特別な機会であるかのように装うと、それは「誤認」を生む表示となり、法律違反となる可能性があります。
夢グループのケースでは、「5日間限定価格」と表示されていたものの、その価格は期間外でも常時適用されており、典型的なスケアシティ型のダークパターンとして問題視されました。
中小企業にも当てはまるリスクとは?
大手企業が対象となった今回の命令ですが、同様の表示手法は中小企業の現場でもよく見られます。とくに以下のような表現には注意が必要です。
- 「期間限定セール」なのに、実際は常にその価格で販売している
- 「今だけ送料無料」とうたっているが、別の手数料が後から加算される
- 「〇〇円相当が無料」としているが、通常価格の裏付けが不明確
- こうした表示が実際の販売実態と一致していない場合、「知らなかった」では済まされず、行政処分の対象になる可能性があります。
サイト・広告表示の見直しを
景品表示法違反による課徴金は、中小企業にとって大きな経済的・信用リスクとなります。特にECサイトやSNS広告など、自社でコンテンツを発信している企業では以下の対応が求められます。
ダークパターン最新情報
ユーザーからのクレームや法令違反を招くダークパターンを回避しよう
具体的な4つの対応策
- 「期間限定」「今だけ」などの表示は、実際の販売状況と一致しているか常に確認
- 広告文は社内で複数人のチェックを通す体制を整備
- 表示ルールのガイドラインを社内で共有し、教育を実施
- 必要に応じて、法律や消費者庁のガイドラインを確認、または専門家に相談
まとめ
インターネットや紙媒体を問わず、広告表示に関する規制は年々厳しくなっています。消費者庁は、企業の規模に関係なく違反行為を摘発する姿勢を強めており、今回の件はその象徴ともいえます。
中小企業であっても、誠実な広告表示はお客様の信頼を得るための重要な要素です。今回の夢グループの件を教訓に、ぜひ今一度、自社の表示内容を見直してみてはいかがでしょうか。