特商法違反事例から学ぶ|詐欺的な通販の「定期購入」に潜む事業リスク

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近年、ネット通販における「定期購入」をめぐるトラブルが急増しています。「知らないうちに定期購入契約が結ばれていた」「解約が非常に難しい」といった消費者からの苦情が後を絶ちません。

こうしたトラブルの多くは、消費者を意図せず不利な判断に誘導するウェブデザイン、いわゆる「ダークパターン」によって引き起こされています。

事業者が売上を伸ばす目的で無意識にダークパターンの手法を用いる場合もありますが、その結果、顧客の信頼を失うだけでなく、重大な法的リスクを伴う恐れがあります。本記事では、EC事業者が回避すべきダークパターンのポイントについて具体的な特商法違反事例を紹介しながら解説します。

事例1:解約できない!HappyLifeBioに9か月の業務停止命令

消費者庁は、2024年10月に、美容液「ハダキララ」などを販売するEC事業者HappyLifeBioに対し、特定商取引法に基づき9か月間の業務停止を命令しました。

複雑で困難な解約手続きで消費者トラブルが多発

 

 

問題となったポイント

特定商取引法では、通信販売における申し込みの「最終確認画面」で取引にかかわる重要な事項(商品等の分量、対価、支払時期、引渡し時期、契約の解除に関する事項等 )を明確に表示することが義務付けられています(法第12条の6)。しかし同社は、解約方法を明確に表示していませんでした。

具体的には、以下のようなポイントが問題視されています。

  • 最終確認画面に解約の窓口となる電話番号が記載されておらず、「ご利用規約」ページに書かれている条件と異なる内容が表示されるケースがあった。
  • 電話で解約する場合、次回の出荷予定日の10日前までに電話をかけ、その後自動音声で案内される別の番号にかけ直す必要があるなど、複雑な操作が必要だった。
  • 解約するためにはたまったポイントを全て使い切る必要があり、ポイントを使用しないで解約したい場合は、ポイント消滅請求をする必要があったが、この請求をするためにも複数ページを遷移する必要があるなど複雑な操作が必要だった。

参考:消費者庁 通信販売業者【HappyLifeBio】に対する行政処分について

事例2:勝手に定期購入に!育毛剤等を販売する3社に3か月の業務停止命令

東京都は、2024年11月に、美容液や育毛剤などを販売するTRIBE(トライブ)、LIALUSTER(リアラスター)、hairju(ヘアージュ)の3社に、特定商取引法に基づき3か月間の業務停止を命令しました。3社の代表は同一人物で、一体となって販売活動を行っていました。

意図しない定期購入契約で消費者トラブルが多発

問題となったポイント

  • 「回数しばりなし」をうたった定期購入の申し込みが完了したあとに、サンクスページで提示された特典を適用すると、最初に注文した回数縛りなしの契約が「回数しばりあり」の定期購入に変更されていた。
  • サンクスページでは記事LPなどで用いた「しばりのない」という表現と対比しやすい「しばりのある」という表現を用いず、「最低〇回のご継続をお約束いただく…」と別の表現を用いていた。また、小さい文字で表示するなど内容が変更されたことに気付きにくい設計となっていた。

本件は、申し込み完了後のサンクスページで提示されたクーポン適用で条件が変更されるという悪質な事案です。特定商取引法の広告表示義務違反(法第11条)として違反認定されました。

参考:東京くらしWEB 「定期購入」により美容液・育毛剤を販売していた通信販売・電話勧誘販売事業者(3社)に対し、業務停止命令(3か月)・改善指示

 

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「詐欺的な定期購入商法」によるトラブルは急増中

上述の事例にもあるような、ダークパターンによる通販の定期購入トラブルは近年急増しています。

定期購入に関する典型的なダークパターン事例:

  • 登録画面では「お試し」「いつでも解約可能」など、魅力的なオファーを提示するが、離れた場所に契約期間の縛りなどの条件が小さく表示されている。結果として、表示に気付かないユーザーの意思に反して定期購入の契約が締結されてしまう。(ダークパターン事例「強制的な継続性」)
  • 「解約ボタンが見つからない」「解約するために複雑なステップが必要」など、簡単に解約できないしくみになっている。(ダークパターン事例「ゴキブリホイホイ」)

消費者庁によると、消費生活相談件数は増加の一途を辿っているとされています。

定期購入トラブルの増加を示すグラフ

画像引用元:消費者庁 特定商取引の改正について

事業者にもリスクあり!2022年6月特商法改正による規制強化について

消費者トラブル増加の背景を受けて、2022年6月には通販の詐欺的な定期購入商法に対する規制が強化された改正特定商取引法が施行されました。

改正後の特定商取引法では、事業者は、購入前の最終確認画面において、取引に関する重要事項を明確に表示することが義務づけられています。具体的には、商品等の分量、対価、支払時期、引渡し時期、契約の解除に関する事項などが該当します。また、そこで誤認を生じさせるような表示もしてはいけません。(法第12条の6)

事業者は、「通信販売の申込み段階における表示についてのガイドライン」を参考にしながらわかりやすい表示を徹底することが求められます。

そのほか、詐欺的な定期購入に関する法改正のポイントは以下のとおりです。

  • 定期購入でないと誤認させる表示等に対する直罰化
  • 上記の表示によって申込みをした場合に申込みの取消しを認める制度の創設
  • 通信販売の契約の解除の妨害に当たる行為の禁止
  • 上記の誤認させる表示や解除の妨害等を適格消費者団体の 差止請求の対象に追加

引用元:消費者庁 特定商取引法改正について

特定商取引法の改正には定期購入と誤認させる表示に対して厳罰化が盛り込まれており、違反すると刑事罰(懲役や罰金)を受ける可能性もあります。定期購入を提供する際には、契約内容や解約手続きに関する情報を法律に基づいて適切かつ正確に提供するよう徹底しましょう。

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