ドアベルが鳴り、手元に小包が届きました。
開けてみると、黒い靴下が20枚。
靴下?
でも私は注文していません。
それは単にあなたが気づかなかっただけなのです。
オンラインのマーケティングにおけるダークパターンに、私たちは日々どのように惑わされているのでしょうか?
よく使われるダークパターンの例とともに、探っていきましょう。
目次
ダークパターンとは?
先週、あなたはオンライン上で実際に登録することなく、the ultimate socksaver(ソックスセーバー)の定期購入に申し込みました。
なぜそうなってしまったのでしょうか?
簡単に言うと、あなたはオンラインストアで見事にダークパターンに操作されたのです。
ダークパターンとは、企業が消費者の行動を操作するために使用する、ユーザーインターフェースやデザイン要素、あるいはその過程を指します。
私たちは毎日、オンライン上だけでなくオフラインでも操られています。
例えば、スーパーで数本しか残っていないワインを不思議に思ったことはないでしょうか?
突然、あなたはそのボトルを買おうと決めました。
何しろ、数本しか残っていないのなら、きっと美味しいに違いない…。そうですよね?
頭のいいマーケティング担当者の多くは、いつの間にかこうしたパターンを自ら発見し、日々活用しています。
残念なことに、一部のダークパターンの成功により、その数は少なくなるどころか増えているのが現状です。
ダークパターンには無害なものから詐欺的なものまであり、同様に安全な目的から詐欺的な目的まであります。
ダークパターンは、オンラインショップで有効期限が迫っていることを警告する、カウントダウンにもなりえます。
先ほどの例の場合、支払時にかろうじて見えるように、靴下の定期購入に申し込んでいることを示すこともできるでしょう。
しかしダークパターンは、視覚的な要素である必要さえないのです。
それは単純に、信じられないほど面倒な解約手続きで、二度と定期購読の停止をできないようにするためです。
多くの企業がダークパターンを使う理由
なぜ企業がこんなことをしなければならないのでしょうか?
それは、単純に効果があるからです。
1963人の参加者を対象とした2021年の調査では、無害なダークパターンを使用した場合、オンラインで「怪しげな」サービスを利用した人の数は2倍以上になりました。
これが不正なパターンだと、その4倍近くの数になります。
残念ながら、ユーザーと企業の利害は一致しないことがほとんどです。
ユーザーから得られるクリック数、登録数、購入数が多ければ多いほど、企業の利益は大きくなるのです。
つまりこれは、ビジネスにとっては良いことですが、あなたにとっては悪いことです。
企業やマーケティングチームが、ある一定の仕事量をこなさなければならず、それを達成したいと思うとき、彼らは時として苦渋の選択を迫られます。
その中にはダークパターンも含まれています。
注意:ダーク・パターンは、短期的な目標(売上増加など)を達成するのには適しているが、長期的には企業イメージを損なうことが多い。
ダークパターンの仕組みとは
正直に教えてください。
あなたは、ウェブサイトのすべてのページを読みますか?
ほとんどの人はそうではないでしょう。
多くの場合、できるだけ早くその内容を理解するために、文章をざっと読み、目を通しているのではないでしょうか。
その際、私たちは文章を読み飛ばすだけでなく、ユーザインターフェースも読み飛ばしています。
ダークパターンは、人間がエネルギーを節約しようとする、脳の自然な傾向を利用しているのです。
私たちの脳は怠け者で、できるだけエネルギーを節約しようと試みています。
これこそが、注意深く読まず、文章を読み飛ばす理由でしょう。
すでに学習された行動パターンが、繰り返し呼び出され、判断を下しています。
この時が、まさにダークパターンの出番です。
私たちは細かい字をさっと無視し、何に同意しているのか理解しないままボタンをクリックしてしまいます。
そして、これは私たちの脳のせいでは決してなく、完全に理解できることなのです。
私たちは日々、膨大な情報に圧倒され、常に決断を迫られています。
通知を読み、ボタンをクリックし、通知を受け入れ、「いいね!」に反応し、コメントを書く…。
情報に基づいた決断をする時間はありません。
ウェブサイトにアクセスするたびに、「all (すべて) 」が何であるかも知らないまま、「accept all(すべて受け入れる) 」をクリックしていませんか?
私たちは 「すべて」に対応する神経を持っていません。
また、大きくて青い「accept all (すべて受け入れる) 」ボタンは、小さくてグレーの目立たないボタンよりも、ずっと目を引くデザインになっています。
私たちの注意は、他者の利益のために明確に向けられ、利用されています。
要約:私たちの脳は完全に支配されており、これこそが、ダークパターンがうまく機能する理由。
これらのテクニックの多くは、私たち人間の限られた知覚を利用している。
デザインパターンが本当に “ダーク “なのはいつなのか
ユーザーが高額な契約や定期購読を解約することが難しくなり、金銭的、個人的、あるいはデータ関連の不利益を被るようになると、そのデザインパターンは “ダーク “と呼ばれるようになりました。
例えば、ウェブサイトには定期購読の申し込みボタンが目に見える形で表示されているのに対し、定期購読をキャンセルするための選択肢がどこかに隠されている場合、これはダークパターンです。
なぜなら、今後10年間契約する選択肢は、通常、ユーザーの利益ではなく、会社の利益につながるからです。
実は、ダークパターンのルールはいたってシンプルです。
「会社だけが得をするときはいつでも、それはダークパターンである。」
ですから、これにはさまざまなことが含まれます。
ウェブサイト上のクッキーのバナーについては誰もがご存じですよね。
たいていの場合、「すべてのクッキーを許可する」のボタンに焦点が当てられ、プライバシーを保護する領域については隠されています。
これは誰が得をするのか?
もちろん企業であり、ユーザーではありません。
したがって、これはダークパターンです。
要約: もしデザインパターンがユーザーのためにならないのであれば、それはたいていダークパターンである。
ダークパターンは合法なのか
これはイエスでもあり、ノーでもあります。
詐欺の意図と操作の境界を見極めるのは、たいていの場合簡単ではありません。
国内および欧州の法律では、個々のダークパターンを明確に規制していません(2023年1月現在)。
しかし、ダークパターンによって損害を被った人は、理論的には損害賠償を請求ができます。
もちろん、GDPRやTTDSGのように、少なくともデータ保護のためにダークパターンの使用を多かれ少なかれ規制する法律はあります。
例えば、2022年にはGoogleやFacebookがクッキーのバナーに関する問題を起こしました。
両社とも、クッキーのバナーでユーザーがクッキーを拒否することを、クッキーを許可するよりも難しくしたことで、EU
(欧州連合) とフランスの規制に違反しました。
その結果、Googleは1億5000万ユーロ、 Facebookは6000万ユーロの制裁金を支払うことになったのです。
なお、TikTokとMicrosoftはフランスで同様の罰則を受けています。
そのため、ダークパターンは企業のイメージを著しく損なうだけでなく、収益も悪化させる可能性があります。
よく使われるダークパターンの実例
ダークパターンは、どこにでも存在します。
ヨーロッパで実施された調査によると、EU (欧州連合) の消費者が利用する、最も人気のあるウェブサイトやアプリの97%が、少なくとも1つのダークパターンを使用しています。
こうしたダークなパターンは、さまざまな形で現れます。
無害な場合もあれば、欺瞞的で卑劣な場合もあるでしょう。
今後、それらを認識しうまく対応するために、最もよく知られているダークパターンを紹介します。
アクティビティ通知
“この宿泊施設がまた予約されました!”
これは、本当にそうなのでしょうか?
アクティビティ通知は多くの場合、購入、予約、操作が行われたことを示す人工的な合図であり、これは、希少性の感覚を作り出すことで、ユーザーに意図的なプレッシャーを与えます。
通知ダークパターンの例
同時にそれは、自分もそうしたいと思うきっかけにもなります。
多くの人が使っている、あるいは買っているのであれば、その製品は良いものに違いないし、迷うことなく使うことができるでしょう。
ここで、私たちの集団本能が扱われています。
というのも、私たちは決断を簡潔にするために、他の人と同じように行動したがるのです。
残念ながら、これらのアクティビティ通知は、実際のデータや情報に基づいていないことが少なくありません。
従って、偽の情報が提示されているため、これはダークパターンと言えるでしょう。
アクティビティ通知にはもう一つ種類があり、これはご存知の方も多いかもしれません。
それは、SNSやアプリ上の未読メッセージを示す小さなドットです。
これらの通知は、見落としがちな重要なメッセージを少し見てみるようユーザーを促すためのもので、これもダークパターンのひとつです。
ニュースがまったくなく、通知がアプリやウェブサイトへ、ユーザーをおびき寄せるためだけに使われている場合は、なおさらです。
アプリによっては、さらに注目を集めるためにアプリのアイコンに継続的にドットを表示するものまであります。
この種のダークパターンは、継続的な通知を生み出し、ユーザーを常に落ち着かない状態に置くため、特に有害です。
これは、一種の中毒行動を引き起こすことさえあるでしょう。
繰り返される妨害行為
ウェブサイトをスクロールしていると、突然ニュースレターを広告するポップアップが現れました。
閉じても数秒後に、何度も何度も出てきます。
このパターンは危険とみなされませんが、非常に迷惑です!
ポップアップは煩わしいだけでなく、ダークパターンのひとつでもある
これは、企業にとっては良いことでも、ユーザーにとっては必ずしも良いことではないということを示します。
またこれには、割引を受けるために、ニュースレターに登録しなければならないことも含まれるでしょう。
背景には、何かを何度も繰り返せば繰り返すほど、そのことがより肯定的に受け止められるという考え方が隠されているのです。
この原則は行動経済学に由来し、単なる露出効果と呼ばれています。
しかし残念なことに、この原則は今日の世界ではあまり機能していません。
それは、広告に類似した内容、広告の近くにある内容、伝統的に広告に指定されている場所に表示される内容を無視することを学んだからです。
そして、広告のように見えるものがあるとすれば、それはポップアップです。
ゴキブリホイホイと強制的な継続性
この2つのダークなパターンは、しばしば組み合わせて使われます。
ゴキブリホイホイでは、アカウントの作成もお試し購読の申し込みも、非常に簡単に行われます。
一方で、アカウントを削除したり、購読をキャンセルしたい場合は、非常に困難です。
そのためには、Eメールを送るか、手紙を送るか、直接電話をしなければなりません。
つまり、できる限り大きなハードルを作ることがポイントなのです。
登録解除のハードルが高い:ダークパターン
そしてログイン時には、強制的な継続性が追加で用いられます。
例えば、「無料」で登録できるのに、登録時にクレジットカード情報を提供しなければならないことがよくありますよね。
これは通常、強制的な継続性の警告を示しています。
このクレジットカード情報は、試用期間が終了した後、実際の購読料金を請求するために使用されますが、これは自動課金で行われることがよくあります。
この2つのパターンを組み合わせることで、真のダークパターン作品が出来上がります。
しかしなぜこれが「ゴキブリホイホイ」という名前なのでしょうか?
この名前は、”Roaches check in, but they don’t check out!”、つまり「ゴキブリはチェックインするが、チェックアウトしない」というフレーズに由来しています。
この場合、ユーザーはチェックインは簡単にできますが、チェックアウトは簡単にできないしくみになっているからです。
こっそりカゴにいれる
オンラインで買い物をする際、店によっては気づかないうちに商品をカゴに入れてしまうという卑劣な手口を使います。
これを「こっそりカゴに入れる」と言われています。
仕組みを説明すると、これは、買い物カゴに商品を入れると、チェックアウトの過程で自動的に他の商品が追加されます。
目的の商品についての記載はありますが、他の商品に関してはあまり目立たないため見逃しやすくなっています。
例えば、ノートパソコンを購入する場合、追加の「こっそりカゴに入れる」商品は、ノートパソコンの収納用ケースかもしれません。
しかし結局、ユーザーはノートパソコンを保護しないままにしておきたくはないですよね?
オンラインショップのダークパターン
もしその商品が注目を集めるなら、追加のテクニックが使われます。
なぜなら追加商品の価格は、ほとんど損をしないように選ばれるからです。
1.99ユーロの記事はほとんど目立ちません!
しかし、それだけではありません。
もうひとつコツがあるのです。
そのアイテムは、必ずしも物理的なものである必要はなく、単純に安心感を与えるものであればいいのです。
例えば、保険や延長保証が一例で、特に専門的な商品には注意が必要です。
これらのテクニックはすべて「こっそりカゴに入れる」パターンと連動しています。
プレセレクション
このパターンでは、製品に2つの選択肢が提示され、そのうちの1つがあらかじめ選択されています。
しかし、この選択肢は必ずしもあなたにとって有益ではありません。
その好例が、「A」で始まる世界的に有名な超大手オンライン小売業者の「定期購読」です。
ここでは、単一の製品だけを販売するのではなく、2つの選択肢が用意されています。単品と「お得な定期購入」。
定期購入は、「カートに入れる」をクリックすると契約が成立するように、一部が事前選択として設定されています。
しかも、靴下は一度だけでなく、毎月送られてきます。
ただし、その場合、1回の購入につき1ユーロの割引となります. 😏
注意:どのオプションが事前に選択されていますか?
もう一つの例は、ニュースレター購読の事前の選択です。
例えば、1つのサービスにのみ登録したい場合、この手続きではあらかじめ「ニュースレターの受信を希望する」にチェックが入っています。
事前に選択するパターンは、”隠された情報 “のパターンと並んで最もよく使われるダークパターンです。
隠されたコスト
このパターンでは、重要な情報やオプションは隠されたり、ほとんど目立たないように表示されています。
情報を見るには、どこかをクリックするか、よく見るか、積極的に検索しなければなりません。
特にEメールでは、このパターンが何度も見られます。
すべてのニュースレターでは、購読解除ができるようになっていなければなりません。
しかし、オプションが必要だからといって、目に見えるようにする必要はないため、「配信停止」のリンクは、メールの中で見えないようにするか、ほとんど見えないように隠されます。
黒い背景に黒い文字では、非常に小さな文字と同様、かなり読みにくいですよね。
ダークパターンとして隠された情報
クッキーのバナーにもこのパターンが使われています。
ここでは、クッキーを拒否するために「すべての設定」などをクリックする必要があります。
この種の誘導は、ほとんどすべてのサイトで何らかの形で見つけることができるでしょう。
コンファームシェイミイング(羞恥心の植え付け)
コンファームシェイミイング -提供者の利益にならない選択をすることを恥じらうこと。
そして、それを理由に考えを変更させること。
このパターンはニュースレターの登録や通知設定によく見られます。
例えば、あるブログのニュースレターに登録したくない場合、まず 「No, I want to stay poor (いいえ、私は貧乏のままでいたいです。)」をクリックしなければいけません。
この種のメールは、「いいえ、オファーはいりません。」や「いいえ、私は出血多量で死ぬ方が好きです。」、あるいは「私は善意の支援はしたくありません。」までさまざまです。
人為的希少性
限定2本、キャンペーン終了まであと4時間!
このワークショップは残り10枠!
人為的な希少性は、購買意欲を刺激するために利用されますが、これには色々な形があります。
- 時間の不足
- 量の不足
- アクセス不足
私たちはプレッシャーの中で、より迅速に決断を下します。
そしてその決断は、たいてい希少性に基づいて自動的に決められます。
結局のところ、誰も素晴らしいチャンスを逃したくはないのです。
ダークパターンに陥らないために
ダークパターンからあなたを積極的に守る方法があります。
ただ、ある小さなことを理解することが必要です。
ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンによれば、私たちの脳は2つのモードに分かれて動いています。
それは、気楽モードと本番モードです。
気楽モードでは、私たちの脳は常に自動運転になりがちで、あまり注意深く考えず、慣れ親しんだ行動パターンを使い、エネルギーを節約するために直感で判断する傾向があります。
このモードは自動車を運転している人なら知っているかもしれません。
アクセルやブレーキの踏み方を毎秒考えることもなく、このモードでは、私たちはダークパターンにとても影響されやすくなります。
ダークパターンを感知して対抗するには、本番モードに切り替える必要があります。
このモードでは、注意深く読み、ボタンをクリックする前に考えます。
また、魅力的な特典の細かい文字に注意を払い、事前選択を認識し、すべてのオファーには飛びつくことはないでしょう。
ダークパターンの未来
ダークパターンは目新しいものではありません。
企業は常に、ある種の言葉やイメージを使って私たちを操ろうとしてきました。
過去との違いは、私たちの世界とそれに伴う操作の可能性が、より複雑で、より速く、よりコントロールが難しくなっていることです。
音声アシスタントや スマートホームデバイスは、ダークパターンが私たちの日常生活に忍び込む、新たな機会を与えているでしょう。
そして、人工知能の進歩により、ダークパターンはさらに個性的で目立たず、大衆に適したものになるかもしれません。
さらには、現実の中にダークパターンを取り入れるために、さらに多くのデータが企業から提供されることになるとされています。
課題は、私たち消費者がダークパターンから身を守る必要があるということです。
ダークパターンが存在することを認識しましょう。
それを認識すれば、積極的に抵抗できます。
魅力的なオファーに目を奪われることなく、直感に従ってオンライン上で行動しなければなりません。
ダークパターンは決して私たちのための利益ではなく、常に会社の利益のためなのです。