2024年11月、健康食品・サプリメントなどの販売を行う大手製薬会社の大正製薬株式会社が、ステルスマーケティングに関する問題で、消費者庁から景品表示法違反として再発防止の措置命令を受けました。
近年、インフルエンサーや専門家とのコラボレーションを活用し、商品の信頼性を高める手法が広く普及しています。しかし、この手法は効果的である反面、使い方を誤ると、ダークパターンに転じて消費者の信頼を損なうだけでなく、法的リスクを伴う可能性もあります。
この記事では、事例を詳しく検証し、具体的なリスクとその回避方法についてわかりやすく解説します。
目次
【2024年11月】大正製薬株式会社の景品表示法違反事例
大正製薬は、同社が販売するサプリメント「NMN taisho」に関するステルスマーケティングをめぐって、消費者庁から景品表示法違反で再発防止の措置命令を受けました。2023年10月にステルスマーケティングに対する規制(ステマ規制法)が施行されて以来、措置命令が出されるのはこれが3例目です。
参考:消費者庁HP「令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。」
問題となった事案の概要
大正製薬は、インフルエンサー3人に無償で商品を提供し、報酬を支払ったうえで、Instagramへの投稿を依頼しました。
Instagramで企業が投稿を促した場合は「#PR」「#広告」などの関連タグをつけなければいけないとされています。
参考:一般社団法人口コミマーケティング協会WOMJガイドライン
実際のInstagramの投稿には「#PR」などの表記がついているものの、それを同社のランディングページに転載した際に、Instagramの投稿がPR投稿であることを明記していませんでした。消費者庁は、これが、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す表示(=ステルスマーケティング告示)に該当すると認定しました。
画像引用元:大正製薬のホームページ
大正製薬は、「自社サイトへの掲載ならば、広告表記は不要と認識していた」と経緯を説明したうえで、再発防止に努めるとコメントしています。
景品表示法違反による罰則・ペナルティ
消費者庁は、大正製薬に対して以下の措置命令を出しました。
- 消費者に対して、誤認を招いた表示について周知し、訂正を促すこと
- 今後このような違反を繰り返さないため、再発防止策を策定し、役員や従業員に徹底的に周知すること
- 今後、同様のステルスマーケティング行為を行わないこと
なお、措置命令を受けた事実は消費者庁のホームページで公表されるほか、措置命令に違反すると「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」に処される可能性があります(景品表示法46条)。
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今回の事例から事業者が学ぶこと
今回注目すべきなのは、大正製薬が「自社サイトへの掲載ならば、広告表記は不要と認識していた」と説明をしている点です。確かに、ステマ告示のガイドラインを見ると、事業者が表示したことが明らかな場合は告示の対象外とされています。
事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である又は社会通念上明らかであるものは、告示の対象となるものではなく、告示は、そのようなものについての事業者の自由な広告・宣伝活動を阻害するものではない。
引用元:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
そして事業者の表示であることが明らかであるものの具体例として、「PR表記があるものやCM、新聞広告、企業サイト」などが挙げられています。この部分だけを見ると、自社サイトであればPR表記は不要という認識は誤りではないかもしれません。
しかし、ガイドラインの続きを見ると以下の記載があります。
ただし、事業者自身のウェブサイトであっても、ウェブサイトを構成する特定のページにおいて当該事業者の表示ではないと一般消費者に誤認されるおそれがあるような場合(例えば、媒体上で、専門家や一般消費者等の第三者の客観的な意見として表示をしているように見えるものの、実際には、事業者が当該第三者に依頼・指示をして特定の内容の表示をさせた場合や、そもそも事業者が作成し、第三者に何らの依頼すらしていない場合)には、第三者の表示は、当該事業者の表示であることを明瞭に表示しなければならない。
引用元:消費者庁「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準
つまり、自社サイトであっても、第三者による客観的意見のように見える表示は、広告であることを明確に伝える必要があるということです。8月には、RIZAP株式会社も同様の経緯で措置命令を受けています。うっかり違反にならないよう、自社サイトにも注意を払わなければなりません。
参考:消費者庁「RIZAP株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」
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【10月開始ステマ規制】ダークパターンとの共通点を解説
大正製薬の事案に対するSNSの声
SNSなどでは企業に不信感を抱く消費者の声が少なからず見られました。一方、「うっかり違反している事業者は多いだろう」という意見も多く見られます。事業者側の視点では厳しいと感じるかもしれませんが、事例を教訓にしてしっかりと対策するようにしましょう。
大正製薬さん、こんなセコいことしてるなんて、よほど抗肥満薬アライが売れてないのかしら?
— プレミアム小泉さん (@slowkoizumi) November 23, 2024
【専門家の見解も】消費者庁、大正製薬のサプリに措置命令 商品として初のステマ処分 https://t.co/Zgt2qTdqWp
大正製薬 ステマ
— ⋱ 𝚛 𝚒 𝚗 𝚗 𝚢 𝚊 🎀 ⋰ (@rinnya_rin5) November 14, 2024
この図が分かりやすかった。
なるほど、インフルエンサー側はPR付けてたのか。
自社サイトに口コミとして載せたのがダメだったのかな
これ意外としてる企業ありそう😇😇 https://t.co/4QntmMJu9k
「ソーシャルプルーフ」のダークパターンに注意
近年、商品の信頼性を高めるために消費者のレビューを強調したり、インフルエンサーや専門家とコラボレーションしたりする企業が増えています。これは、人が意思決定の際に他人の意見や行動を参考にするという心理傾向、いわゆる「ソーシャルプルーフ(社会的証明)」を活用したマーケティングです。
こうしたマーケティング手法はユーザーの行動を促すのに効果的である一方で、今回のようにこれらの手法が誤解を生む形で用いられた場合、ダークパターンに転じて消費者の信頼を失う可能性があるため注意が必要です。過度な誇大広告や誤解を招く表現を避け、景品表示法の遵守を徹底するようにしましょう。
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まとめ
今回は大正製薬のステルスマーケティングの事例を取り上げて、景品表示法違反を避けるために事業者が気を付けるべきポイントについて解説しました。
ソーシャルプルーフを活用したマーケティングは、使い方を誤るとダークパターンに転じて消費者の信頼を失うだけでなく、法令違反のリスクも伴います。実際の違反事例からも学びを得ながら、チェック体制を強化するようにしましょう。
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