ダークパターン事例 サービスの退会が難しい「ゴキブリホイホイ」

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「ゴキブリホイホイ」のダークパターンとは?

ユーザーエクスペリエンスの専門家であるハリー・ブリヌルは、2010年に「ダークパターン」という言葉を作りました。ダークパターンとは、ユーザーに意図しない、あるいは潜在的に有害な決定をさせることを強要したり、誘導したり、欺いたりすることで、オンラインサービスに利益をもたらすユーザーインターフェース(UI)やデザインのことです。ハリー・ブリヌルは、ダークパターンの認知度を高めるために、ダークパターンを16種類に分類したサイト「Deceptive Patterns」を運営しています。

この記事では、その中の1つであるゴキブリホイホイについて説明します。

ブリヌル氏は、ゴキブリホイホイを下記のように定義しております。

サービスやサブスクリプションに申し込むのは簡単だが、それをキャンセルするのは非常に難しいという欺瞞的なパターン

引用元:Deceptive Patterns

サブスクの罠!お申し込みは驚くほど簡単、なのに解約できない

ゴキブリホイホイのパターン認識は、ユーザーがあるサービスに入るのは非常に簡単だが、抜け出すのは難しいというものです。ゴキブリホイホイの例えとしては、古典的な迷路が考えられます。迷路に入るのは簡単ですが、正しい出口(通常は1つしかありません)を見つけるのははるかに困難です。

出口を見つけることは、優れた迷路の主な目的のひとつですが、ゴキブリホイホイは、ユーザーを引き止めるための戦術にすぎません。

ゴキブリホイホイは、いくつかの異なるダークパターンを組み合わせてデザインされることが多いです。よくある手法として下記が挙げられます。

  1. 退会ページが長い。あるいは画面遷移数が多い。
  2. 解約ボタンをグレーアウト(目立たせない)する一方、解約のキャンセルボタンを目立たせる。(視覚的干渉
  3. サービスを解約することで失うものをチラつかせる。(損失回避性)いわば「引き止めてくる」/〇〇が見れなくなりますよ/〇〇の機能が使えなくなりますよ/せっかく繋がった友達とコンタクト取れなくなります、など。
  4. サービスの安価なプランを勧めてくる / 割引オファーを提示してくる。(これも「引き止め」にあたります。)
  5. アンケートが表示され退会する理由を聞いてくる。

「解約手続きは電話のみ」消費者センターにはクレームが急増中

インターネット通販で「初回無料」「お試し価格」だから、試してみようと思ったことはありませんか。でもちょっと待ってください。その申し込み、要注意です。1回きりのお試しのつもりで購入したら、実際には違ったというトラブルが急増しています。どんなサイトに注意をし、何を確認すべきなのかポイントを紹介します。

「お試し」のつもりが定期購入に?

健康食品や化粧品の広告を見て、通常の価格よりも安く購入したつもりが、複数回購入する定期契約だったというケースが増えています。
また、「お試し」や「1回だけ」と思って購入したつもりが、実は定期購入契約で、注文していないのに2回目の注文があったり、キャンセルできなかったり、電話がつながらなかったりするケースも少なくありません。

【事例】 事業者に電話がつながらず解約できない

インターネットで検索して見つけた化粧品のクリームを注文しました。1回目の注文は約2000円、2回目の注文は約4000円で、いつでもキャンセルできると記載されていました。1回目の商品を受け取って使用した後、もう必要ないと思い、事業者にキャンセルの電話をしました。しかし、1日に数回、数日間かけても、電話は混み合っていて繋がらない。次の商品発送の10日前までにキャンセルの電話をしなければならないことはわかっているのですが、いつまでたってもつながりません。どうしたらいいでしょうか?

「お試し」に申し込む前に注意することは?

定期購入に関するトラブルの多くは、契約条件の確認不足または、販売サイトが明確でないことが原因です。販売サイトで商品が定期購入であることが示されていれば、ユーザーが契約したことを意識していなくても、契約条件に同意したとみなされます。満足いかなかったからと、商品を送り返したり、代金を支払わなかったりすることはできません。
申し込む際には、商品と契約条件をよく確認する必要があります。

□1回限りの購入か? 継続的な購入か?
□継続的な購入の場合、回数が定められているか?
□支払う総額はいくらか?
□解約や返品が可能か? 
□解約や返品ができる場合はどんな条件か?

引用元:政府広報オンライン

総務省統計局によると、2人以上の世帯でインターネットを利用して買い物をする割合は、新コロナの緊急事態宣言が発令された昨年4月以降、上昇しています。同年5月には50.5%の世帯がインターネットを利用しており、2002年の調査開始以来、初めて50%を超えました。

こうした中、全国の消費生活センターに寄せられたネットショッピングに関する相談件数は、273,271件で、前年より57,284件増加し、過去5年間で最も多い件数となりました。

引用元:産経新聞

メルマガの解除方法をわざと複雑にしている企業も

会員画面にログインしないとメルマガ解除できない(ユーザーはID/PASSを覚えていない)という場合が多々あります。また、メルマガ配信停止リンクがない、あるいは文字が小さい、故意にわかりにくい場合もあります。例えば、故意にわかりにくい事例として、あの有名なオバマ氏の選挙チームもこのゴキブリホイホイの「ダークパターン」を使っていました。

これは、2012年にオバマ・キャンペーンが配信したニュースレターのフッターです。メルマガの配信を停止するためのリンクと、メールアドレスを変更するためのリンクがあります。当初、オリジナルのパターンでは、「update address」と「unsubscribe」という標準的なリンクテキストを使用していました。しかし、オバマ陣営は、支持者とできるだけ接点を保ちたいと考えていました。そこでメディアチームがとった戦略は、フッター部分をごちゃごちゃにして、リンクテキストを「here」に置き換えることでした。

目立たないように、わかり難いようにしたのです。 その結果、どうなったと思いますか? 購読解除率を22%も下げることに成功しました。短期戦での手荒なやり方ではありますが、結果的に、このキャンペーン内でオバマ陣営は6000万ドル以上の寄付金を手にしたのです。

引用元:キジムナーのビジネスメモブログ

悪質なゴキブリホイホイ(別名:ローチモーテル)のダークパターン事例

ゴキブリホイホイ(ローチモーテル)はなんと世界的大手企業でも行われていたという実例を紹介しましょう。

欧米ではAmazonプライムの解約ページが原因で訴訟に発展

Amazonプライム会員の方の中には、解約しようとしたらなぜかうまく引きとめられてしまったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。2021年1月14日、ノルウェーの政府系消費者保護機関であるノルウェー消費者評議会は、「AmazonはAmazonプライム会員の解約を不当に妨げており、法律に違反している」との声明を発表しました。これを受けて、欧米の16の消費者団体がAmazonに対して訴訟を起こしました。

ノルウェー消費者協議会が実施した調査によると、ノルウェーの消費者の4人に1人が「会員制有料サービスの解約方法は分かりにくい」と答えています。

6回も画面が遷移するAmazonプライムの解約手続きについて、ノルウェーの消費者評議会は、「Amazonプライム会員を解約しようとした多くの消費者が、複雑なナビゲーションメニュー、紛らわしい表現、混乱を招く選択肢、不要な提案など、多くのハードルに直面している」と述べています。同社は、手続きを必要以上に複雑化し、混乱させるというダークパターンに該当していると非難しています。

ノルウェー消費者協議会のデジタルサービス担当責任者であるFinn Lützow-Holm Myrstad氏は、発表声明の中で「有料会員の解約は、加入するのと同じくらい簡単であるべきです。退会を希望する消費者を惑わす現状の商慣行は、消費者の期待と信頼を裏切るだけでなく、法律にも違反しています。」と述べました。

引用元: GIGAZINE

退会手続きが十数ページにも及ぶ「ディズニープラス」のサイト設計

 動画配信サービス「ディズニー+(プラス)」の解約 についてはこちらの記事でも触れていますが、退会を試みようとすると、完了までにトップページから十数ページ遷移する必要がありました。パソコン、スマートフォンいずれも同様です。 手続きの途中には退会のデメリットが提示されるなど、思いとどまるよう促される場面もありました。

これはまさに、惑わせる選択肢と長い手順を迫られるケースである、ダークパターンのゴキブリホイホイに当てはまります。

過度な引き止めは避け、サービスの問題点に目を向ける

ゴキブリホイホイは、ダークパターンの組み合わせによって複雑に設計されています。過度な引き留めは返ってユーザーの不信へとつながりますので、簡単・明確な解除や解約ができるようにし、ユーザーが離脱する理由を解明し、改善しましょう。

お申し込み時に要したステップ数以下で解約できるようにする

少なくとも、お申し込み時に必要なステップ(時間・画面数)以下で、解約できるようにしましょう。サービスを望んでいないユーザーを無理やり継続させても、クレームにつながるだけです。カスタマーサポートの対応コスト、時間、お金がかかり、レピュテーションリスク(SNSなどでの風評被害/悪評の拡散)も高まってしまいます。

ユーザーを引き止めるのではなく、ユーザーが離れた理由を突き止める

ユーザーが離脱するのは、サービスに満足していないからです。その理由を突き止めてサービスを改善しなければ、根本的な解決にはならないでしょう。

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