アプリで無料トライアルにチェックを入れ、何の縛りもないと思っていたのに、後になってクレジットカードに請求が発生していたことに気づいたことはありませんか? さらに悪いことに、簡単に解約する方法が見つからなかったという経験はありませんか? または、ニュースレターに登録したつもりが、「送信」ボタンをクリックした後で、複数の「関連する」ニュースレターにも同時に登録されていた、なんてこともあるかもしれません。これらの体験は、誰にでも起こりうることです。
これらの経験は「ディセプティブパターン(欺瞞的パターン)」の一例です。ディセプティブパターンとは、ユーザーが意図せずオンラインで何かのアクションを完了してしまうように仕向ける手法のことです。これには、ユーザーを欺くためにデザインに追加された、さまざまな視覚的要素、インタラクティブな要素、音声的要素、動きの要素などが含まれます。
業界では「ダークパターン」という言葉が使われることもありますが、Google をはじめとする一部の企業では、問題のあるものを「ダーク(暗い)」、潜在的に「悪い」と表現することを避けるために、デザイナーは「ディセプティブパターン(欺瞞的パターン)」という表現をよく使用します。その代わりに、「ディセプティブ(欺瞞的)」という言葉は、ユーザーを騙して、本来なら行わなかったであろう行動を取らせたり、購入しなかったであろう商品を買わせたりする戦術そのものに焦点を当てています。
ディセプティブパターンは、UXデザイナーのハリー・ブリヌルによって2010年に初めて公にされました。彼は11種類のパターンをリストアップしており、その中には、動画内で重複して紹介されているものもあります。ここでは、UXデザイナーとして仕事をする中で遭遇する可能性のある代表的なディセプティブパターンを詳しく見ていきましょう。
強制的な継続(Forced Continuity)
強制的な継続とは、事前の警告や通知なしに、ユーザーに対して自動的に会員費などを請求する手法です。
冒頭のシナリオを思い出してください。ユーザーは追加条件なしで無料トライアルを申し込んだつもりだったのに、後になってクレジットカードに請求が発生しており、しかも簡単に解約できない状況に陥ってしまいました。UXデザイナーとして、ユーザーに対して率直かつ透明性のある対応を心がけましょう。
- 無料トライアルの終了前、および請求が発生する前にユーザーに通知する。
- ユーザーが簡単に解約できるようにする(解約方法を探し回る必要がないようにする)。
- 解約手続きをスムーズに進められるリンクを提供する。
- ボタンなどの視覚要素には明確なラベルを付ける。
こっそりカゴに入れる(Sneak Into Basket)
こっそりカゴに入れるとは、ユーザーが購入を希望していない商品やサービスが自動的にカートに追加され、ユーザー自身が削除しなければならない手法です。
例えば、支払いの時に意図しない追加アイテムがカートに入っていたり、特定のプランやサービスがデフォルトで「カートに追加」に設定されていたりする場合が該当します。UXデザインにおいて、このようなディセプティブパターンを回避する簡単な方法は、デフォルトで追加されるオプションを設定しないことです。ユーザーが購入を期待している商品やサービスに、意図しない「サプライズ」が含まれないようにしましょう。
隠れたコスト(Hidden Costs)
隠れたコストとは、支払いの最終段階まで、追加料金や手数料を開示しない手法です。
例えば、ユーザーが特定の金額で商品やサービスを購入できると思っていたのに、最終的な決済画面で追加の手数料が発生していた場合です。アプリやウェブサイトは、ユーザーが別のサイトでより安い商品を探すのに疲れ、再び最初から購入の手続きを行うのを嫌がることを期待して、こうした隠れたコストを追加します。
あなた自身のデザインにおいて、価格に関する情報は事前にすべて提示することが重要です。隠れたコストを防ぐ良い方法は、ユーザーが支払い前に送料や税金などを計算できるツールを提供することです。
羞恥心の植え付け(Confirmshaming)
羞恥心の植え付けとは、ユーザーが何かを辞退しようとした際に、罪悪感を抱かせるような表現を使う手法です。
例えば、ユーザーが選択しようとしているときに、ボタンの中の文章がその選択に対して罪悪感を抱かせようとしている場合です。このようなボタンは、ユーザーがサービスを利用しないことで何かを逃してしまうのではないかと心配し、提供されているサービスに参加するよう促すことを目的として追加されます。
デザインするときには、ボタンや確認画面の文言には十分に注意を払い、ユーザーの感情を操作しないようにしましょう。
緊急性(Urgency)
緊急性とは、「今すぐ購入しないと損をする」とユーザーに思わせ、焦って購入を決断させる手法です。
緊急性の例としては、ウェブサイトで次の1時間だけの特別セールや、30分以内に期限が切れるクーポンを促進するポップアップが表示される場合があります。緊急性の目的は、ユーザーに限られた時間内で購入を急がせることです。そうしないと、素晴らしいセールを逃して、定価で購入しなければならないというプレッシャーを与えます。
緊急性は、限られたオファーやディールに関するものだけではありません。それは、ユーザーに迅速に購入を決断させるためのプレッシャーを加えることでもあります。あなたのデザインにおいて、緊急性をどのように活用しているかを考え、このディセプティブパターンを使ってユーザーを操作して、急いで購入させることがないようにしましょう。
希少性(Scarcity)
希少性とは、ウェブサイトが商品の在庫数が限られていることをユーザーに強調する手法です。
希少性の例としては、ウェブサイトで「この商品は残りわずか5個です」と表示され、その後に手遅れになる前に購入するよう促すメッセージが表示される場合があります。これは、前述の緊急性を感じさせる手法が商品販売に適用される一例です。
あなたのデザインにおいて、ユーザーが購入しようとしている商品について何を知る必要があるのか、また、希少性が衝動買いを促すために使われているのか、それとも商品の在庫状況を伝えるために使われているのかを考えましょう。デザイナーは常にユーザーに情報を提供することを目指し、欺くことは避けるべきです。
ディセプティブパターンを避けるには?
新しいUXデザイナーとして、ディセプティブパターンを防ぐためには、まずはディセプティブパターンのことを理解することが重要です。そうすることで、実際に遭遇した際に適切に修正することができます。ディセプティブパターンは非倫理的であり、避けるべきものです。ユーザーに対して明確かつ誠実であることは、あなたのブランドや製品への信頼を高めることにつながります。
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