情報設計

「規約に同意」に初期チェックが入っているのは問題でしょうか?

Q
マッチングアプリの登録画面を設計しています。
「利用規約に同意します」のチェックボックスに、あらかじめチェックを入れた状態で表示する案があります。
手間は減りますが、ユーザーが内容を読まずに同意したことになってしまわないでしょうか?
A
「規約に同意する」チェックボックスに初期状態でチェックが入っている設計は問題があります。
この手法は「事前選択」または「強制的同意」と呼ばれるダークパターンの一種であり、ユーザーが自発的に同意していないにもかかわらず、同意したように扱われるリスクがあるためです。

ユーザーは通常、チェックボックスにチェックを入れるという行為を通じて「私は規約を読み、同意します」という意思を明示します。
ところが、最初からチェックが入っていると、その重要な選択が自動的に処理されてしまい、ユーザーが同意したことにすら気づかないまま手続きが進む可能性があります。

法的にもこの手法には問題があります。
EUのGDPR(一般データ保護規則)では、ユーザーの「明示的かつ自由意思による同意」が義務づけられており、初期チェック済みの状態はその条件を満たしません。
2020年には欧州司法裁判所により、初期チェックによる同意は無効であるとの明確な判断も示されています。

ユーザーの意思を尊重し、法令にも適合する設計を実現するためには、以下の改善策が有効です。

1. 同意チェックボックスは初期状態でオフにし、ユーザーが自らチェックを入れる「オプトイン方式」を採用する

2. 利用規約の全文だけでなく、重要な要点を簡潔にまとめた概要版を併記する

3. プライバシーに関わる項目(例:第三者提供やデータの保管期間など)を視覚的に目立たせる

4. 規約への同意と、マーケティング目的などの任意の同意は明確に区別する

5. 法律用語に偏らず、誰でも理解できる平易な言葉で説明する

このように、透明性とユーザーの自律性を重視した設計は、単なるコンバージョン率以上の価値をもたらします。
誠実な同意プロセスこそが、信頼されるサービスの基本であり、将来のリスク回避にもつながります。

解説

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