ダークパターンの背後に潜む要因と目的

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このウェブサイトでは、常々ダークパターンの事例やニュースを紹介していますが、今回はダークパターンが生まれる背景と、その目的について考察してみましょう。

ダークパターンが生まれる3つの要因

オンラインプライバシー研究者であるアーバインド・ナラヤナン氏らは、彼らの書籍において、ダークパターンが生み出される要因として、以下の3つを明らかにしています。

1.欺瞞的な「小売業における商慣行」

2.公共政策におけるナッジ

3.デザインコミュニティでのグロースハック

ここからこれら3つを詳しく説明していきます。

欺瞞的な「小売業における商慣行」

小売業は長い歴史の中で、消費者の興味を引くために様々な手法を取り入れてきました。

たとえば、「98円」や「1,980円」といったキリの悪い価格設定があります。これは、「100円」「2,000円」といったキリのよい価格よりも心理的に安く感じさせる「サイコロジカルプライシング(心理学的価格付け)」の効果があります。

他にも、「おとり広告」や「虚偽広告」など、売る意思のない商品を広告に載せたり、実際には単なる改装の際に「閉店セール」として宣伝する手法が存在します。

このような消費者の心理学的な隙をついた施策が継続された結果、多くの消費者はそれに慣れ、これらの手法を当たり前のように受け入れるようになりました。消費者は魅力的な要素のない場所には集まらないため、企業は自社商品の売り上げを伸ばすために、このような「ウソの種まき」をし、集客に努めています。

こうした施策は商習慣として市場に浸透し、企業は日々自社商品の売り上げを伸ばすために、これらの工夫を繰り返しているのです。

サイコロジカルプライシングについては、下記の記事でも説明しています。

サイコロジカルプライシングとは?価格戦略の使い方と注意点を解説

公共政策におけるナッジ

ナッジとは、もともと英語で「肘でちょっとつつく」という意味があり、ビジネスシーンでも、その言葉の通り、そっと人に行動を変えるサインを与え、それを自然に後押しをする戦略ということを表します。

「公共政策におけるナッジ」とは、公共の利益のためにナッジを利用した施策のことです。

例を挙げて説明しましょう。下図は欧米の各国でされた、脳死などの場合の臓器提供意思の比較調査結果です。左側の4カ国と右の7カ国の結果を比較すると、差が一目瞭然ですね。では、これらの違いは一体何が原因と考えられるでしょうか?

臓器提供という問題は、宗教観や家族の同意など、個人による自分自身の希望だけで決定するには難しいものですが、この結果は国民性による意識の違いだけが原因ではありません。

実は、左の4カ国は臓器提供意思をオプトイン(提供する意思があればチェックする)にする方針を採用しており、一方右の7カ国はオプトアウト(提供する意思がなければチェックする)にする方針を採用していたのです。

つまり、意思表示の方法をどう設定するかが、臓器提供意思に大きな影響を及ぼしたということが分かると思います。オプトインの場合は積極的に行動する必要があり、オプトアウトの場合は特に何もしなくてもよいため、多くの人がそのままの選択を受け入れる傾向にあります。

このように、ナッジを活用した公共政策が、人々の行動や選択に大きな影響を与える、ということが明確になりました。

デザインコミュニティでのグロースハック

グロースハックは、成長を促進するためのマーケティング手法であり、データ分析による製品価値や市場ニーズの把握や実験的アプローチの迅速な検証・改善を通じて、企業は急成長を目指します。しかし、グロースハックにおける成長追求の過程で、ダークパターンに陥ることがあります。

例えば、A/Bテストを繰り返し実施し、最良のデザインを追求していく過程で、結果としてそのデザインがダークパターンになってしまうことがあります。もちろん、グロースハック自体が詐欺的な手法ではなく、デザイナーにも悪意はありません。ただ、純粋に、成長を追求することに重点を置きすぎることで、結果的にダークパターンに至ってしまっていたということも、多発しているのです。

ダークパターンの3つの目的

ダークパターンの背景を説明してきましたが、前述したようにダークパターンには、悪意のあるものと、偶発的なものがあります。

ここからは悪意のあるダークパターンの目的を3つ紹介していきます。

1.消費者にさらに多く消費させるため
2.ユーザーからより多くの情報を引き出すため
3.サービスをより中毒性の高いものにするため

消費者にさらに多く消費させるため

悪意のある紛らわしいダークパターンデザインにより、消費者は特に必要としないものや、必要以上の量を購入してしまったり、サブスクリプションなどを契約してしまうことがあります。契約後はさらに、退会することを妨害してくる例も少なくありません。

ユーザーからより多くの情報を引き出すため

企業は消費者の情報を重要な資産として求めているため、情報を手に入れるために消費者が誤解しやすいダークパターンのデザインを使用します。

サービスをより中毒性の高いものにするため

ゲーミフィケーション(ゲームデザイン要素やゲームの原則をゲーム以外の物事に応用する取り組み)などによって、ユーザーを虜にし、サービスなどを必要以上に使うように仕向けます。

まとめ

ダークパターンには、悪意のあるものと、そうでないものがありますが、それらが生まれる原因は、デザイナー個人の問題ではなく、企業の性質やビジネスの戦略が関連しています。

ダークパターンを避けるためには、社会全体としてはもちろん、企業が倫理的な視点を持ち、デザイナーにも環境や教育を提供して倫理的なデザインに向けた意識改革や努力が必要です。

 

参考サイト:

https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00715/00002/

https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/meeting_materials/assets/consumer_system_cms101_220922_01.pdf

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